第七夜 お買いもの
「ミコトくん、何か
アキラは毎日、
「
と、ミコトを案じたアキラの提案。
肺炎ならば特に積極的に、栄養をつけるべきだ。
「僕を連れ出してくれるの?」
ミコトの言い回しは少し滑稽だったが、病室から連れ出すという意味では正しい。アキラが頷くと、ミコトはフランネルの
「お出掛けだよ。僕、とても楽しい」
「散歩は楽しいよね。退院したら、もっと遠くへ、楽しいところへ、行けるよ」
ふたりは手を
「アキラさんは背が高いんだね。どうしたら、そんなに大きくなれる?」
百五十センチ未満のミコトが、百八十センチ以上のアキラを見上げて問うた。
「よく眠って、普通に食べることかな」
「僕は薔薇から生まれたんだ。そんな僕でも大きくなれる?」
女医の言葉どおりだ。ミコトは薔薇から生まれたと言い張っている。アキラは
「薔薇にも水と肥料を与えてあげないと育たないだろう? ミコトくんも、そうだよ。この林檎は艶やかだ。薔薇の
アキラと繋いでいた指を
アキラは、
病室に戻る途中、
「
と、ミコトが自動販売機を指差して言った。
ミコトの指は、薔薇色のストレートティーのペットボトルを示す。加糖の清涼飲料水を二本、買い求め、ふたりは休憩所の椅子に並んで腰を掛けた。
アキラに買ってもらった紅茶を、ミコトは本当に
「帰ろうか」
ふたりは各々の寝台に戻った。果実と菓子はミコトのサイドテーブルに置かれて、切り取られた楽園の絵のように
第八夜『お遊び』に続く
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