言葉の取捨選択が巧み。読んでいると、頭の中に綺麗な絵が浮かぶよう。

読後感は、夭折の天才を見た喪失感に似ていました。
その喪失感は、巧みな言葉の選択によって生み出されていると思います。

比較的シンプルなストーリーが、言葉選びのセンスの高さと、読後の喪失感を際立たせているなあと感嘆しました。

上品で巧みな言葉遣い、加えて身体に花が咲く病という面白いアイデアも、すべては作者の才能あってこそで、だからこそ、雛牡丹という人物を描けるのかもしれないなと思いました。

凄いなあと感じた部分は他にもあって、それは登場人物の名づけかたです。
牡丹の花言葉の一つに「百花の王」があるらしいのですが、雛牡丹の性格はまさしく王者の風格であり、「雛」には小さなという意味があります。小さくても、王者の風格だから雛牡丹なのかと気づいて感心しましたし、彼女の行く末を思うと、ストーリーとも符合する部分があって驚きました。椿にも「控えめな美」や「控えめな愛」などの花言葉あって、作中で描かれる椿にぴったりだなあと唸りました。

ラストは本当に綺麗という言葉では片づけられないほど、頭の中に美しい絵が浮かんできて、読後は、良いものを読ませてもらったなあと天井を仰ぎました。

超おすすめです。

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