ずっと引きこもっていた人間が外に出かけるのは相当なエネルギーが必要なはずで、そのエネルギーは周囲の支えがあるからこそ蓄えられるものだと思います。
幸生が出かけようと思ったきっかけに母親は関わっていなくても、出かけるまでのサポートをしたのは主人公である母親です。
主人公はきっと小説に直接描かれていなくても、毎日の食事や家事をたくさんしてきたのだろうし、引きこもりの息子を持っていることから生じる世間の目からも耐えてきたのでしょう。
その日々が息子の外出という形で報われて本当に良かったなあと救われた気分になりますし、最後の幸生の台詞は、母が頑張って支えてきたからなのだなあと気づかされる小説です。
ラストのささやかな感動をぜひ確かめてみてください。