自分では葬ってしまいたいほど無価値なものも、他人から見ればとても高い価値があるかもしれない。醜い顔と美しいバラの庭を持つ女性。美しい外見と汚い過去を持つ男性。二人は自分に欠落している価値を相手に見出す。耽美ものに入るのだろう。基本的に私は耽美は好きではない。だがこの作品はそういったジャンルを軽く飛び越えたテーマを持つ作品だと思う。文句なしの★3つ。
物語の主人公、優美は醜い容貌の持ち主である。だからこそ美を求め、己を否定する。そこに美しい青年、ハルが現れて、彼女たちは美醜を超えた心の交流をする。感情を揺さぶられる短編であることに疑いはない。是非一読してほしい。
それらの境目は酷く、非情な程に曖昧で。それを構成する自意識と他者の感情の差異は、大体辛いものだけど。それでも価値のあるものだと思いました。
人目のつかない屋敷では、ひっそりと薔薇が育てられている。訳あって仮面をつける女主人の前に現れたのは、太陽のように眩しい青年。二人は惹かれていくが、大きな困難が立ち塞がっていた。
耽美な雰囲気とロマンティックな童話のようなお話に魅せられました。私自身耽美な小説を書き続けてきたので、ハルの美しさと、終盤のシーンが心の琴線に触れて、ため息が出ました。それでいて、耽美な雰囲気一辺倒に陥ることなく、ヒロインが自信を得て現実と向き合って生きていくラストシーンも素晴らしかったです。
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