陰謀渦巻く後宮を舞台に、女武侠の痛快アクションが炸裂する!

まさかの後宮を舞台にした武侠物だ。
それも、魔法も神秘もない、頼みは己の功夫だけというガチンコである。

武侠物ということで、アクション シーンの大部分は白兵戦闘なのだが、その描写が秀逸だ。
攻防をほとんど一手ずつ描写しているはずなのに、テンポが落ちず戦闘の緊迫感を損なわない。
「ブルース リーのアクションを読んでいる」ような感覚を各章で堪能できる。

話の本筋である陰謀劇は、非常に複雑で読みごたえがある。
多数の登場人物が、きちんと自分の思惑を持って行動している。
さらに、主人公は陰謀劇の端でちょろちょろする立場なので、入手できる情報は限定的。
このため、陰謀劇の全体像はラスト バトルまで明らかにならず、緊張感を維持して飽きさせない。

この濃密な描写は、史実を舞台にしたことで成立した。
役職、制度、服装、建物などの風景、地理などの描写は最低限に絞られており、唐代の中国をイメージできることが前提条件だ。
ちょっと分からない単語が出ても、ググれば解決する。
もし架空王朝を舞台にしていたら、全てを説明しなければならない。
それでは情報量が多すぎて、読者が物語に集中できなくなっていただろう。

色々書いたが、「ぶげいタイムきらら」のタグに嘘はなかった。

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後宮武侠物語

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