後宮武侠物語

作者 古月

宮廷に渦巻く陰謀に巻き込まれた女官、名を変え挑むのは皇太子妃選抜の闘宴

  • ★★★ Excellent!!!

 すっげぇ……。(感嘆しか出てこない)

 カクヨムを読んでると時々「なんでこれ書籍化してないの?」ってレベルのすごい作品を引き当てる時があるんですけれど、これはまさしくそれでした。
 武侠描写の参考になにか読もうと思いたち、この分野でよく名前をお見かけする作者さんの作品をとりあえずと選んだのすが、もうなんかレベルが違った。

 歴史、ミステリ、百合、そして武侠、どの描写においても隙がない。全てを高いレベルで描きながら、王道のストーリーにより徹底したエンタメ作品として仕上げている。息も吐かせぬバトルがはじまったと思ったら、後宮での乙女達のかしましい日常、かと思えば次々飛び出す歴史上の人物。どの分野が好きな人間でも虜にするおそろしい緻密さを持ちながら、それらがあくまでサブ要素でしかないと感じられる骨太のストーリーで押してくる。圧倒的な小説としてのパワー。いやはやとんでもないものを見てしまった。

 主人公はちょっと針仕事に従事するちょっと冴えない女官の麗雲(後に流螢)。
 しかしながら彼女は幼い頃から武芸をたしなみその腕前は達人級。後宮に入ってからも夜な夜な裏庭で自主トレをしておりました。
 が、そんなところを、妃嬪の一人である徐恵に見つかってしまう。彼女と義姉妹の契りを結んだことから、麗雲はあれよあれよと宮廷にうずまく陰謀に巻き込まれていく。
 自らの過失により、皇太子をあやうく殺害されかけてしまい、その責を問われた彼女は、助命と引き換えに名を捨てます。流恵と名を変えた彼女は、現在の後宮の寵姫たちから皇太子妃を選抜する「比武召妃」なる武術大会へと身を投じ、その背後でうごめく皇太子暗殺の陰謀を探っていくことになる……。

 という、もう面白さしかない筋書きなのですが、これがさらに魅力的なキャラと設定で倍面白い。いやもう、ほんと、すさまじい。スパイモノはここ最近の流行ですが、これを後宮でやろうというアイデアがすさまじい。それもさることならが、ミステリとして最初に仕掛けた「誰が皇太子を狙っているのか」と「皇太子妃選抜武術大会の行方は?」というのが、巧く合わさって読む人を離さない。

 いやはやエンタメってこういうのだよなって、書き手としてぼっこぼっこにされた作品でございました。読み専の方にももちろん、書き手の方にもおすすめの一作です。是非読んでみてください。内容は保証します。

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