心踊るお買い物。


【前回のあらすじ】


 扉を開けると、目の前には緑がいた。


 ダッシュで部屋の中に入った僕は、緑の豊満なお胸にダイブ。


 するところだった。



 ◆◇◆◇◆



 緑は僕の顔を見るなり、勢いよく頭を下げた。


 これは、おはようございます的な何かだろうか?にしてはなんか、本当に、勢いが半端なかったが。


 あまりの勢いと、その近さ。それからまあ、臭いとか。揺れるお胸とか。諸々にびっくりしながらも、適当に辺りを付けた僕は、緑に答えるようこくりと頷く。そして、そんなことよりも、と。緑を連れて食堂へ。心はウキウキとしていた。


 今回のメニューは、ライ麦パンにチーズとポタージュ。ミルク付き。パンはスライスされており、いつもより多く感じる。


 そろそろお米と味噌汁が食べたい。


 ……さて。本題はここから!今日のお食事実況と参りましょう!


 えー、緑ちゃん。まずはスープを一口いただきます。


 目を閉じ、唇につけたスプーンから、少しずつ液体を流します。そして、舌でスープを転がしました。はしたないので、ジュルジュルとは吸いません。


 ワインかよ。僕はそんなことをツッコミます。


 舌全体でスープを味わった緑ちゃんは、ゴクリと喉を鳴らして飲み干しました。


 うんうん。と一人で頷き、ここでようやく目を開けます。


 僕と目線が合いました。


 ちょっとだけ、照れくさそうです。


 こっちまで照れくさくなりますね。視線を戻して食事を始めましょう。


 同じようにスープを一口。


 うん。素材の味が生きてて美味しい。これは、豆の味かな?嫌いではないけど、好きでもないね。


 続きまして、ライ麦パンとチーズを一緒にパクリ。


 しつつ、視線を緑ちゃんに戻します。


 緑ちゃんはライ麦パンをそのままサクサクと齧ります。お淑やかに、小さなお口でサクサクと。リスみたいですね。いいえ、リスです。


 お口に手を当て、隠しながらモグモグと咀嚼。ごっくんと飲み込むと、スープを一口啜った。


 最後にチーズを一切れ、指に摘んで口へと放る。


 ぱくり、と口に含んだ瞬間、僅かに両目を見開いた。次の瞬間には眉を少しばかり下げ、惚けた顔を作り出す。


 そんなにか?と、チーズだけを食べてみる。


 一口噛めば濃厚な味が口の中に広がり、独特の臭みが鼻から抜けた。


 うん。ネチネチした食感といい、普通のチーズ。いや、市販のものよりは美味しい、のか?凡人の舌だからわからんが。


 その後も、いろんな組み合わせで食事を楽しむ緑ちゃん。それを微笑ましく眺めているうちにお食事は終了した。


 ごちそうさまをすると、緑を連れて買い物へ。


 ランニング中に考えたのだが、正直、彼女さえいれば言葉なんて覚えなくてよくね?彼女に会話させて、買い物する。それだけでオールオッケーじゃん。ってね。


 後は冒険者にでもなって依頼をこなして金策問題もクリア。緑がヒーラーだから怪我も全然怖くない。いや、怪我は怖いが、もし、怪我をしても大丈夫。


 唯一の懸念、スマホの充電に関してもバッテリーとコードを生成して、電気系の魔法で充電。壊れなければそのままスマホに接続して充電開始。と。直で電気を流すのは怖いし、これなら完璧だろう。


 これで元の世界に戻る。っていう何とも解決しそうにもない問題は解決だ。一番の理由が消えたからね。


 それに、緑を働かせて僕はニート生活が出来るのに、戻るなんてとんでもない。へへ、奴隷最高。僕は聖人ではないからね。解放しようなんて考えないよ?ちゃんとこき使うさ。


 よし。てことで、防具買ってレベリングを始めよ。そして、とっとと魔法覚えよ。そんでもって俺tueeするんだ。



 ◆◇◆◇◆



 さあ!やって参りました武器屋兼防具屋です!


 見て下さい!この武器の量!大樽に詰め込まれて安売りされております!きっとこの中に魔剣があるに違いない!いいや!ある!


 適当に剣を取り出してっと。


 ふむふむ。


 ほうほう。


 なるほど。


 わからんな。


 普通の剣に見える。柄とかも地味で目立たないし、刀身もなんか普通。当たり前だけど、叩き斬る剣。って感じ。あと、重くて振り回せないな。多分。


 2、3回赤い髪の美少女を思い出しながらの素振り。


 うん、無理。重すぎ。こんなん振ってる間に殺されるわ。ゴブリン舐めんな?


 そっと、剣を樽に戻して……ん?


 ちょんちょん。っと、緑に袖を引っ張られた。かわいい。


 何事かと顔を覗くと、首を振った後に飾られている高価そうな剣たちを指差した。


 これを買うよりはあちらを買った方がいい。と、教えてくれているようだ。優しい。


 樽の中にある武器も気になるが、緑の忠告は無下に出来ない。飾られたているやけに煌びやかな武器たちを見てみよう(買うとは言っていない)。


 えーっと、短剣、片手剣、両手剣、長剣、大剣、打刀、太刀、大太刀、双剣、槍、大槍、薙刀、斧、大斧、大鎚、鎚矛、鉄扇、杖、弓。


 と、いろんな種類の武器が区画ごとに並べられている。


 歪で、禍々しい形をした武器や、コミカルで、宝石のようなものが嵌め込まれた武器など、バリエーションも豊富。


 いや〜、いいっすね〜。実に厨二病心を擽ぐる空間。全武器を予備含めて3つづつ欲しいところ。


 お金さえあれば買ってたね。


 ……触っても、いいのだろうか?


「ぉれぉれ、てわねむぱうぱゎらゅよれこしざなどつしひぢ?てわねもごたそれわんうこ」


 悩んでいるところに店主?のおっちゃんが話しかけてきた。


 おっちゃんは親指で樽を指して、何かを言っている。その内容まではわからないが、あっちにしておけと、そういうことなのだろう。


 僕は緑より、強面のおっちゃんの言うことを聞いた。


 さあ、戻って参りました!今回の武器チョイス!こちらは気軽に手に取れていいですね!


 という事で、こちら!槍です!


 取っ手の部分は木製で、先端には小さな刃物がおまけ程度についています。


 試しに、軽く回してみましょう。


 男とは、長物を持たせると振り回したくなる生き物である。よく、西遊記のお猿さんのように回して遊びましたね。懐かしい。


 と、そんなことを考えながら軽く振るう。


 ビュンビュン。と音を立てて振り回し、最後に中腰で前に構えて終了。


 刃の部分が重くて回しやすい。ただの棒とは大違いだな。攻撃はしたことないから出来ないけど。


 あ、いや。待てよ。とあるゲームでは盾チク最強説があったな。あれくらいなら僕にも出来るぞ?ていうか、ゴブリン相手でも勝てるくね?


 は?いやいやいや。ゴブリン舐めんな?あいつらは1匹見つけたら周りには30匹いるんだぞ?そんなんに勝てるわけねーだろ?通称Gだぞ?緑色のG舐めんな?飛ばねーけどよ。


 うん。そう考えると勝てる気がしない。槍は辞めとこ。


 僕はそっと、槍を戻した。


 続きまして……こちら!


 こちらはなんと、刀で御座います。


 思ったより重いですね。


 腰に鞘を構えまして……素早く抜刀!


 は、出来ませんでした。難しい。


 まあ、ね。昔、刀を使う系の動画見てたから。しかもそれ、真似してたから。こちらは斬り方とかも分かりますよ?思い出せれば、後は楽勝です。あぁ、中二病時代が懐かしい。


 えーっと、確か。右足を半歩前に出して、左足を少しだけ手前に引く。そして、膝はほんの少しだけ曲げて、腰を落とす。


 刀を握る手は、峰からの直線上に親指の付け根を置き、親指と人差し指を主に、中指までを使って軽く握りこむ。右手は人差し指だけが鍔に着くような位置に、左手は柄頭を握らないように少しだけ余裕を持った位置取りを。


 うん。こんな感じ、だったかな……?


 後は刀を振り上げて……袈裟斬り!


 うん。イマイチ。


 テレビで見た薄い鉄板を斬る人みたいにはいかないね。綺麗に真っ直ぐ振れないや。まあでも、剣よりは扱えそう。知識としても、こっちの方があるしね。ていうか、日本人といえば刀でしょ!それ以外使う気ない。


 アサシンよりは、ランサー派だけど。


 よし!この刀、買う!


 僕はおっちゃんに刀を突きつける。


「ぉ、こなざ?てもかなきあゅもゎ?ぉはにあをたぉああせむごうしひぢ?」


 何言ってるか、わかりません。お食事処の定員と違って、予想すら出来ません。する気も、ありません。


 助けて!緑ちゃん!


 チラリ、緑に視線を送り助けを求める。すると、僕の代わりに会話を始めてくれた。


 ……?なんか、忘れてね?


 そう思って全体を見渡す。すると、そこには防具があった。


 あ、そうだった。防具も必要なんだよなぁ〜。でも、武器ほど興味はそそられない。なんか、適当にこの、黒革の鎧装備でいいかな?って感じ。胸当てだけ茶色いけど。


 てか、鉄の鎧とか重くて装備できねーし。


 お、楔帷子あんじゃん。これって重いのかな?試しに持ってみよ。


 いや、重っ!なにこれ、何キロあんの?これつけるとか、重りつけて鍛える修行みたいなもんじゃん。


 あ、待って。こっちのは軽いや。でも、2リットルのペットボトルよりは確実に重い気がする。持ち易さの問題か?いや、重いな。多分。


 これ着て剣振るうとか、無理じゃね?刀も1リットルのペットボトル程度には重量ありそうだよ?そんな重石してゴブリンを相手に戦う?馬鹿じゃないの?死んじゃうから!


 今まで通りボクシングでいいよ。うん。魔物相手に通じるかしらないけど。てか、殴られたら一発KOだね。僕が。確実に。


 ……。


 明日からは、これ付けて朝練するか。


 ボクシングもやめて、赤い髪の美少女みたいに素振りの練習しようかな。そっちの方が刀に慣れるにはいいだろうし。


 ボクシングはあれだ。腰の使い方覚えるのに役立ったよ。うん。


 僕は、革鎧と鎖帷子の軽い方をレジへと持っていく。


 革鎧も結構な重量があった。


 そういえば、魔法を使うのに杖とか必要なのだろうか?一応売ってるみたいだけど。


 僕は、樽に詰め込まれている杖と鎚矛……メイスを取り出して、緑に見せる。


 どっちがいい?と、首を傾げてみると、緑は私ですか?という感じで自分を指差し、首を傾げた。


 僕が頷くと、少し悩んでメイスを指差す。


 杖をなおして、メイスをお買い上げ。


 会計は緑に任せた結果、要求されたお金は銀貨3枚と大銅貨4枚。


 意外と安いんだなぁ。と思いながら支払った。



 ◆◇◆◇◆



 一旦、荷物が多くなったので自室へと戻った僕たち。その僕の手元には、漆黒の打刀が握られていた。


 てへ。かっこいいから買っちゃった。


 なんかこいつ、1番高いところに抜刀されて飾られてたんっすよ。んで、それ見つけた瞬間、買う!ってなって買った。


 後悔はしていない。柄頭から切っ先までベンタブラックの様に黒く、全く艶のない刀身。刃先のみが灰色のそれは、厨二病の僕の心を撃ち抜いた。


 値段は聞いてビックリ、金貨15枚。めっちゃ高いのなんのってね。


 これで不良品だったら泣く。


 緑はなんだか呆れ顔。この良さがわからないとは残念なやつだ。


 僕は鎖帷子の上に、とある死にゲーにあるような黒革の鎧を装備し、帯に刀を二本差し込んだ。


 黒い方の刀は長く、本当は紐で肩にぶら下げて持ち歩きたいのだが(そっちのがカッコよさそう)、二つ刀があるので、この形にしてみた。


 が、ダサい。しかも、コスプレみたいで恥ずかしいし、邪魔。刀二本はダメだ。革鎧とも合っているか微妙だし、何とも言えないな。


 買ったから使うけど。


 試しに、刀を抜いてみる。


 が、黒い方が長過ぎて抜けない。


 腰を引いて不恰好になったらギリギリ抜けるレベル。こいつはダメだ。


 即行で外した。


 おいこら、そこの緑。なに笑とんねん。しばき倒すぞ。


 僕は、黒い方をクローゼットへと仕舞った。


 泣きそ。



 ◆◇◆◇◆



 さて。気を取り直して、今度はこの服装で買い物へと行きましょう。この装備になれるついでとして、緑の服を買ってあげる(さっきの仕返しにエロいやつ)。


 あ、でもその前に水浴びしてもらわなきゃ。服にいい匂いが移っちゃう。


 僕は緑を連れて外へ。タオル(麻布)を渡して体を拭かせると、川がかなり汚れた。下流で水を飲む人ごめんなさい。美女の垢だから許してね。


 ……そういえばこの水、いつも飲んでるけど大丈夫だよな?


 体を拭き終わったところで、今度は回復ポーション系の売ってあった店へと来店。


 ここには何故か、マントやローブのような布製品が売られている。その中には、シスター服も含まれる。この、純白の高そうなシスター服を買おうじゃないか。


 僕はサイズなど気にせず、一着しかないその服を即買い。ついでに、ポーション系の冒険者に必要な物を緑に選ばせ、買った。合計で銀貨9枚、大銅貨6枚、銅貨2枚を支払った。


 緑が買ったものは、ポーション3種類✖︎10本ずつと、ランプに火打石。松明を二本とロープに、革のポーチと特殊な金具や輪っかのついたベルトを2つづつだった。結構高くてビックリした。


 買い物が終わると、それらのアイテムが全てポーチの中に仕舞われた。物理法則を無視したその収納に、あ、この世界には収納魔法的なのがあるんですね。と、1人で納得。


 すぐさま宿に帰ると、早速お着替えタイム。


 第一印象を優先して、着替えている間は背を向けての待機。若干聞こえる布の擦れる音が、少しだけエロく感じた。


 その音も止み、部屋が静かになったところで振り返る。


 すると、そこには聖女がいた。


 とかにはならなかった。髪、ボサボサだし。服、ぱっつんぱっつんだし。鎖帷子の跡、浮き出てるし。メイス、持ってるし。腰には茶色のベルト、巻かれてるし。ベルトには、ポーチ、ポーション、ロープ、松明なんかが装備されてるし。金具はポーチをセットする為に、輪っかはポーションを吊るす為にあったんですね。って感じだし。ぶつかったら割れそうだし。服、ぱっつんぱっつんだし。どちらかといえば、性女だし。


 お腹周りだけ、キツそうではないが、お胸とお尻はギリギリ。体のラインが丸見えで、こちらの方が奴隷服よりエロく見えるかも?まるで痴女。


 いや、鎖帷子が微妙だな。


 そして、そのうち、ビリッと破けそう。


 ちなみに、彼女の胸は爆乳ってほど大きくはない。例えるなら、うわ!おっぱいでか!っと二度見するほどではなく、大きいおっぱいだなぁ〜。と、そんな感想を抱く程度のおっぱいである。


 てか、メイス怖いな。笑顔で手の平にパチパチ当てて音立てるのやめてね(まるで、雌型オークみたいだ)。



 ◆◇◆◇◆



 その後、昨日のように言葉を、謝罪や感謝、挨拶の言葉を教えてもらい、飯を食ってその日は終了した。

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言葉も通じない世界だが、奴隷を買えたのでイチャイチャします。〜うちの嫁が一番可愛い〜 @attomaku

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