奇人変人がやって来た

 マルガレーテが妊娠し、故郷のフランドルで出産させることにしたので、俺と部下たちで「ケーニヒ・フィーリプ」でキールへ戻ってきた。


 キールの港に着くと、ハンス=ユルゲン・フォン・アルニムが目敏く見つけて、近寄ってきた。


 「アル様、おかえりなさい。みんな、帰りを待ちわびてましたよ。」


 「ほぅ、お前たちにしては、珍しいことがあったものだな。

 てっきり、俺がいないほうがサボれて良いと思ってるのかと思ってた」


 「ふふ、まぁそこら辺は上手くやってますよ。

 待ちわびてたのは、城に変な連中が来てるからですよ。

 オットーは変なおっさんたちと意気投合して話して仕事にならないんで、モーリッツのヤツが嘆いてます」


 「変な連中って、どんなヤツらだ?」


 「イタリアの有名な画家だか何だかで、その取り巻きだか弟子だか連れて現れたんです。

 ピッコロさんだか、何だかって変なおっさんが、私兵の訓練をずっと観てるって、軍の連中も文句言ってましたわ。

 まぁ、その変なおっさんがオットーと意気投合してるらしいんですけどね」


 「何だ、そりゃ?取り敢えず、城に戻ってみるか」


 俺は、イヤな予感を感じながら、キール城へと戻ったのであった。キール城へ戻ると、すぐにモーリッツがやって来た。


 「アルブレヒト様、フィレンツェからレオナルド・ダ・ヴィンチ殿がいらしております。

 私の手には負えないので、早くアルブレヒト様がご対応してください」


 イヤな予感は案の定当たっており、フィレンツェからレオナルド・ダ・ヴィンチがやって来てしまったらしい。

 俺は帰って来たばかりなのに、すぐに厄介事に巻き込まれるとは、たまったものではない。



 仕方ないので、レオナルドに与えられている部屋へと向かった。

 レオナルドの部屋をノックし、入ると、俺の記憶では綺麗に整頓されていた部屋が、物で溢れかえっていた。

 その中で、若い弟子に囲まれている老人がレオナルドであろう。老人がこちらを向き、話しかけてくる。


 「おぉ、貴方がアルブレヒト殿か、私はフィレンツェのレオナルド・ダ・ヴィンチだ。

 急に訪ねてしまって、申し訳ないな」


 「こちらこそ、高名なダ・ヴィンチ先生にお会いできて光栄です。

 私がキールの代官をしているアルブレヒト・フォン・ホーエンツォレルンです。」


 「貴方からの手紙を楽しく拝見させていただいた。

 私も考えていなかった発想はとても素晴らしい。

 是非とも、貴方と語り合いたくて、訪ねてしまったのだ」


 それから、レオナルドの質問攻めに遭い、この時代で伝えて良いような科学の知識を教えると、実験をするとか言い始めて、机に向かってしまった。

 お陰で解放されたのだが、自由な爺さんだ。



 レオナルドの部屋を離れ、部屋に戻ろうとすると、オットーと一人の男性と遭遇してしまった。

 この男が、オットーと意気投合した変なおっさんか?


 「アルブレヒト様、お戻りになられましたか。

 こちらが、ニッコロ・マキャヴェッリ殿ですぞ」


 ニッコロ・マキャヴェッリまで来てしまったんかい!


 「おぉ、貴方がアルブレヒト殿ですか。レオナルド・ダ・ヴィンチ殿が貴方の元へ行くと聞き、私も一緒に付いてきてしまいました」


 ニッコロはオットーと話して満足しているのか、レオナルドに比べると大人しい。ニッコロが唱える市民軍、国民軍についてチラッと話して終わった。

 余りにもオットーと仲良くしているので、会ってはいけない者同士が会ってしまったのではなかろうか?


 取り敢えず、キールを離れなければならなくなったので、引き継ぎや諸々の手配をしなければならない。

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プロイセン王子?に転生したので、新大陸征服します 持是院少納言 @heinrich1870

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