シュレースヴィヒ=ホルシュタインでの生活

 姉のアンナに付いてきて、シュレースヴィヒ=ホルシュタインでの生活が始まった。シュレースヴィヒ=ホルシュタインでは、ドイツ語が普通に話されているので、生活がしやすい。

 アンナの夫のフレゼリクもドイツ語で話している。と言うか、フレゼリクはデンマーク語がそんなに得意ではない様だ。

 そもそも、フレゼリクのオルデンブルク家がドイツ系だし、母親は父の従兄弟でドイツ人だから、仕方ないのかもしれない。


 アンナたち公爵夫妻は、フレゼリクの居城であるゴットルフ城に居を構えた。ゴットルフ城には、ご丁寧に俺の部屋もある。

 フレゼリクは16歳年下の幼妻であるアンナを、ブランデンブルクの特産物にちなんで「テルトウカブ」と呼んでいるが、何でそんな風に呼ぶのか、俺の感性では理解できない。

 まぁ、アンナは喜んでいるから、外野が口を出すべきでは無いだろう。


 俺は、キールの代官でもあるので、キール城で過ごすことも多い。キールは後にドイツの軍港になることを考えると、兄の子孫がドイツ皇帝となってキールを獲得するのだから、因縁の様なものを感じる。

 そんな、キール城も、今では俺の悪友たちの溜まり場になっている。ブランデンブルクの時の取り巻きたちがやって来たのだ。

 その際に、モーリッツ・フォン・ブランケンブルクがオットー・フォン・ビスマルクってヤツを連れてきた。

 ビスマルク家は、14世紀に商人クラウス・フォン・ビスマルクが、ブランデンブルク辺境伯のヴィッテルスバッハ家から貴族の身分とブルクシュタルの領地を与えられたらしい。

 オットーはビスマルク家の第四子らしく、身長が高くて、良く食べるため疎まれていたらしい。なので、知り合いのモーリッツが連れてきたそうだ。

 何だが、どこかの鉄血宰相のようで縁起が良いので、取り巻きとして採用してあげることとしよう。

 キール城には、マティアス・ムーリッヒも最近、現れるようになった。彼は以前に話した船乗りになりたいことについて、深掘りしてくることは無かった。こちらから話すのを待っているのだろう。

 キールの代官になったことで、キールの船乗りや商家と関わりを持つようになった。ムーリッヒの紹介なども有り、キールの商家は丁寧に対応してくれる。

 この日もまたキール市の船に乗って、海に出ていた。取り巻きの連中は、船酔いしない体質のようで、安心している。


 「ユルゲンとルイトポルトの航海術の腕は上がったか?」


 俺は取り巻きのハンス=ユルゲン・フォン・アルニムとルイトポルト・フォン・クネーセベックに問い掛けた。

 アルニムの実家は、ブランデンブルクの宮廷で官僚貴族化し始めており、教養が高いので、航海術を学ばせているのだ。


 「なかなか難しいですが、面白いですよ。アル様をインドまで導いて差し上げますよ」


 ユルゲンが笑いながら応える。いつも飄々とした感じのヤツだ。


 「ユルゲン、お前はまだ海図も読めないだろ。そんなんじゃアル様をインドまで連れていけないぞ」


 ルイトポルトは根が真面目なので、勉強もしっかりしていることだろう。二人には航海術をしっかりと身に付けてもらいたい。まぁ、目的地はインドじゃないんだけどな。しかし、この頃は新大陸をインドだと思ってるから、相手にインドと言い続けてもおかしくないか。


 他の取り巻きであるグスタフ・フォン・アルヴェンスレーベン、アーダルベルト・フォン・ブレドウ、ハンス・フォン・グライフェンベルクたちには、操船や船乗りの指揮、キール市の衛兵隊の訓練などを手伝わせていた。

 オットー・フォン・ビスマルク、モーリッツ・フォン・ブランケンブルク、アドルフ・フォン・デア・シューレンブルクにはキール市の文官の仕事を手伝ってもらっている。

 オットーのヤツは、軍隊系の仕事は嫌がるので、文官の仕事をさせてるのに、何故か決闘が好きで、決闘する度に負けなしの奇妙なヤツだった。

 アダム・フォン・トロットは俺の秘書官な仕事をしてくれている。フィレンツェのニッコロ・マキャヴェッリとレオナルド・ダ・ヴィンチとやり取りをしたいので、手紙を出すよう頼んでいる。


 彼等には、新大陸で活躍出来るよう、日頃の仕事を頑張って、成長してもらおう。

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