キールでの新婚生活
マルガレーテとの新婚生活は、キールにおいて過ごしていた。
キール市での収入が増えたことと、マルガレーテと結婚して、新大陸進出への道筋が見えてきたことで、取り巻きだった9名を正式に家臣として採用した。本人たちは既に家臣のつもりだったようだが。
俺はキール市の代官として、キールの運営を行っていたが、マルガレーテによる査察で、次々と非効率な問題点が発覚した。
イタリアで発揮した行政手腕は健在なようだ。
アドルフ・フォン・デア・シューレンブルク、モーリッツ・フォン・ブランケンブルク、オットー・フォン・ビスマルクを彼女の下に付けて、行政改革を行うとともに、3名の行政能力を鍛えて貰う。
航海術を学ばせているハンス=ユルゲン・フォン・アルニム、ルイトポルト・フォン・クネーセベックも随分と様になってきたようだ。
結婚の贈り物で、義兄のフィリップ、デンマークのハンス王からキャラック船を貰っていた。俺が船好き(特に船が好きという訳ではない)だと言う噂を聞いていたのだろう。ハンス王は、俺がインドに行きたがっている話を聞いているのか、インドの儲けに絡みたい下心があるのかもしれない。
特に、義兄のフィリップが贈ってくれたキャラック船は大きく、フランドルで建造したばかりの最新艦を購入して贈ってくれたそうだ。
船には義兄から取って「ケーニヒ・フィーリプ」と名付けることにした。義兄へのゴマ摺りである。義兄上はもっと義弟を大切にして良いんだよ?
デンマークのハンス王から贈られた船も、それに準ずるくらい大きく、「ケーニッヒ・ハンス」と名付けた。
2隻の大型キャラック船を手に入れたので、ルイトポルト・フォン・クネーセベックを「ケーニヒ・フィーリプ」の艦長に、ハンス=ユルゲン・フォン・アルニムを「ケーニヒ・ハンス」の艦長にした。
二人には、船にオス猫を乗せて飼うよう命じる。船の中のネズミ対策だ。
二人は猫なんて乗せたら魔女の呪いにかかるだとか訳の分からないこと言うんで、航海で食事をネズミに奪われたくなかったら、言うとおりにしろと言っておいた。
後で、船員たちも騒ぎだしたが、遥か遠くインドではペスト避けに猫を飼うらしい。お前らがペストにかかりたいんだったら構わんが、俺はかかりたくないから、船で飼うぞと言うと、ペストが怖いのか渋々従っていた。
船に積む水に、洗って綺麗にした木炭を入れておく習慣も命じておく。木炭を入れておけば、水が長持ちするからな。あと、食料にザワークラウトは忘れずに積むようにも命じた。
キール市の船で雇っていた船乗りで、忠実でマトモな船乗りを引き抜き、真っ当そうな若者を雇い、船乗り育てることとした。
一緒に新大陸に渡る者たちは、俺に忠実でなければならないならな。
グスタフ・フォン・アルヴェンスレーベン、アーダルベルト・フォン・ブレドウ、ハンス・フォン・グライフェンベルクたちも衛兵を率いるのが上手くなってきている。
グスタフとハンスは歩兵を指揮するのが得意な様で、アーダルベルトは騎兵の指揮が得意な様だ。
キール市が成長し、収入が増えたことで、俺も私兵を少しずつ増やしている。傭兵を雇うことも考えたが、癖の強い自由人を雇うより、周辺のドイツ地域から溢れた次男三男を雇うことにした。
この際だから、軍制も自分の好きな様にすることとして、3名の指揮官にプロイセン式の基本教練のやり方を教え、徹底させる様に命じた。3名は上手く理解していないようだが、俺が言うので、取り敢えずやってみるらしい。
武器も少しずつ購入して溜め込み始めている。
そして、リューベックの大商人マティアス・ムーリッヒには、インド進出への支援者をお願いしている。
彼には、俺がインドを目指していることを話していたが、随分前からインド進出の相談をしている。支援者として協力して欲しいからだ。
教皇アレクサンデル6世が承認したトルデシリャス条約があるため、インドの領土獲得に否定的だったが、マルガレーテの縁談が持ち上がり、ブルゴーニュ公フィリップが義兄になれば、フィリップに頼んでインド進出を可能にしてみせると説得すると、支援者になってくれることに同意してくれた。
結婚式の贈り物も、当初は小さなキャラック船を贈ろうと思ったらしいが、ブルゴーニュ公とデンマーク王が新造艦を購入したと聞き、気を効かせて換金性の高い物を贈ってくれた。
今では、その品はマティアスの元に戻っている。結婚の贈り物に大量の銃や消耗物資を贈る訳にはいかないからな。
因みに、兄のブランデンブルク選帝侯ヨアヒムと姉のアンナは無難な贈り物だった。俺をインドに行かせないために、結婚させたんだから当然か。
アダム・フォン・トロットは秘書官的な立場だが、最近は俺の暗部的な部分を担ってもらっている。
そんなアダムには、暗殺者を雇って、サヴォイア公国領内のグラン・ボルナンド渓谷にあるヴィラアレトの山間の村に住む農夫ルイ・ファーブルとマリー・ペリシャン夫妻を捜しだし、殺すよう命じた。
アダムは質問することなく、暗殺者を手配をしてくれた。
フィレンツェのニッコロ・マキャヴェッリとレオナルド・ダ・ヴィンチとの文通も継続している。
ニッコロは持論の「市民軍」について書いてくれるので、賞賛するとともに、イタリアって都市が独立してて、憎しみ合ってるから「市民軍」って難しいんじゃないの?あんた、ドイツにでも来て「国民軍」作ったほうが良いよって、テキトーな意見を送っておいた。
レオナルドは、科学っぽい話題ばかり書いて送ってくるので、こちらもテキトーに意見を送っていたら、「お前分かってくれんの?お前に会ってみたいわ」みたいなこと言われたので、「機会があったら、会いたいですね」と日本人的な玉虫色のことを書いて返事をしていた。
キールでの生活が落ち着いた頃、俺とマルガレーテは、マルガレーテの希望により、フランドルを訪れることになったのであった。
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