孤独なる生の中で

謎の感染経路によって人類が植物と化した地球で、たった一人孤独に生きる寂しさや痛みが克明に描かれている。
弱肉強食の自然界で生きることを余儀なくされ、生き残るために非道に徹した一人の人間が、悔恨しながらも「生」を実感して日々を送っている。

唯一の話し相手であるイマジナリーフレンドが、彼の状況に応じた心性を表しており、まるで生きるためにしなくてはならないことを、ひとつひとつ自分に確認しているかのようだ。
それは、生存者への接し方であったり、カップラーメンを食べることであったり、鹿のような生物を殺すことであったり、そして殺した生物を食べること。
自然界で生活する様子が事細かに描写されていることからも、玲が「生」とどのように向き合い、向き合わざるを得ないのか、その苦悩が読み取れる。

そして、夏から冬へ、冬から春へと季節は移り変わる。
最後に訪れた春のあの実は、はたして人類の再生のはじまりであり、希望なのか。

玲がその春とどう向き合い、どう生きていくのか、それは想像するしかない。

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