驚異に対する行動は、動物なら「逃げる(攻撃を仕掛けるのも回避するため)」、植物なら「状況に応じて自身を変える」。
最終的に生き残り再生を担うのは、恐らく植物でしょう。
人間も進化の過程に現れた一つの種族に過ぎず、一体どこへ向かっているのか。
こちらの作品では、自然界の大原則と本当の意味での『畏怖』が克明に描かれていると思いました。
一方で、そこにぽつりと生き残る玲の心の内も、やはり人間心理の往生がわかりやすく描かれていて素敵でした。
夏と冬の対比。
ここでは食材を得る環境、食事をする場所、そして勿論『食』の内容も含め、あらゆる点で「人工」から「自然」への移行が描かれています。
胃の内容物は徹底的に「消化」され尽くしているであろう環境下で、身近にあるものへの感謝も、夏から冬にかけて、ある意味で「昇華」されたように感じました。
人間が生きるためには体温を維持しなければなりません。必然的にカロリーを摂取する必要があり、秋から冬にかけては、特にその生理的欲求が高まる季節です。
冬になり、玲の生き様が「食物連鎖の一員」に変化し、ある意味で『植物』的な生き様に回帰したように思えました。
一体どんな「春」を迎えるのか。
是非とも一人でも多くの方に読んでいただきたい作品です。