その領地を守護するのは、可憐な小さな幽霊。その姿、領主にしか見えないが

 領主として領民から信頼を得る立派な父と、後継者として育てられた兄がいたため、主人公は、自由気ままに、自領での暮らしを、本を読むことで謳歌していた。

 そこに、納税のために王都に向かった、父と兄が乗る船が難破した……との悲報が、主人公の元に届けられる。

 悲嘆に暮れる主人公にのしかかるのは、急ぎ領主の代行。兄任せにしていた領主の後継。そして、完遂していない納税。
 それらの重圧に負け、一度は、領外への逃亡を画策する主人公だったが……。

 領主としての責任と、領民を護るという義務に、震える膝を無理やり押さえて立ち上がる、その主人公の姿は凛々しいけれど、些か頼りない。
 その志を認めて、父に請われて戻ってきた幽霊の助けを借りながら、立派な領主になろうとする姿は、読んでいて、きっと応援したくなると思うのです。

 落ちついた物語の進行は、おとなの人たちでも、楽しく読めると思います。
 転生や無双に飽きた……という読者の皆さま。たまには、本格的なファンタジー、如何でしょう。

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