昔話2 弘の話

割りと解説してるとこもあるから意外と少ない。


 憑き物 2(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648041964899)より

 ・道切みちき

  結界の境界を可視化する目印、または

  それにより結界を引くこと。

  目印としては注連縄しめなわや道祖神など。

  また、山で寝る時に縄で道切りした区画に寝ると

  狼などに襲われないと言う。

  狩猟や山に関するもので三途縄さんずなわ

  (道切みちきりに使う縄ないし縄を使った道切みちきり)

  の長さが足りない時に「一尋いちひろ二尋にひろ三尋半さんひろはん」と

  唱えると、長さが足りずとも道切みちきりに使えるという。

  


 ・かねの音は東西問わず魔除まよ

  より正確には一定量の騒音。その中でも特に

  金物の音は魔除まよけとされ、かねの音は

  こちらに分類される。

  除夜の鐘を考えれば、日本の鐘には悪しきものを

  追い払う意味合いがあるらしい。

  また、寺でも教会でも、古くは時報の役割を

  になう、つまりは時間的境界を作り出す

  ものだった。

  『鐘の本 ヨーロッパの音と祈りの民俗誌 』

  (八坂書房)が一部参考文献。



 憑き物 3(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648042258800)より

  ・我は虎、如何いかに鳴くとも犬は犬、獅子の歯噛はがみをおそれざらめや

   犬けのまじない歌。

   参考資料は『日本俗信辞典 動物編』

   (角川ソフィア文庫)。


  ・掌に虎の字を書いて握り込む

   同じく犬けのまじない。

   参考文献同上。



 憑き物 4(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648042412066)より

  ・『風姿花伝ふうしかでん』の「時分じぶんの花」

   『風姿花伝ふうしかでん』は

   世阿弥ぜあみが記した能についての理論書。

   その中で、思春期の年頃のものが持つ

   独特の魅力を、世阿弥ぜあみ

   その年頃限りの「時分じぶんの花」とし、

   年を取って、この「時分じぶんの花」が

   なくなっていった先に、どのような「花」を

   物にできるかが重要であるとく(意訳)



 憑き物 5(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648058130241)より

  ・moonshine

   月光、戯言たわごと、密造酒などの意味がある。

   まあ、欧米圏で多く月は狂的なシンボル

   だったり、古代ギリシャでは「月を引き降ろす」

   が魔術の行使を意味したりする……研究書の

  「Drawing Down the Moon: Magic in the Ancient

  Greco-Roman World」の日本語訳出ないかな……。



 憑き物 7(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648258941136)より

 ・しからば、犬がすゑ、犬じものどもの、ゆめさらさらさへくな

  すゑ末裔まつえい、子孫のこと。

  犬じものは犬のようなものという意味。

  ゆめさらさらは下に禁止をともなって「決して」。

  要は努々ゆめゆめと同じ。

  さへくは枕詞まくらことばことさへく」の「さへく」に

  同じ。騒がしく喋ること。



 犬神 1(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648288491932)より

  ・蠱毒こどく

   大体のオタクがなんらかの媒体で履修しがちな

   オカルトネタの鉄板。

   様々な毒虫を瓶などの中に集めて閉じ込め、

   相食わせる。最後に残った一匹をまつり上げ、

   その毒を使用して他者を害したり、富貴を

   己の手元に集めるよう利用したりするという。

   恨みと毒を生体濃縮させたみたいな。


  ・吸血鬼という死者

   創作物での設定は置いといて(重要)、

   西洋の民間伝承上の吸血鬼の大前提は

   「死者であること」である。

   それ以外の条件は各地でバラつきがある。



 犬神 2(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648299864983)より

  ・校舎裏手の側溝に上履うわばき隠された時

   これね、作者の実体験(真顔)



 犬神 4(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648393747798)より

  ・野犬のいぬという彷徨さまよえる怪異

   『怪異の民俗学1 憑きもの』(河出新書房)

   収録の柳田國男の「巫女考(抄)」が参考資料。

   以降、御子神みこがみの話とかもこれ。


  ・戸籍がですね、東京の空襲で焼けてまして

   作者の祖父がこれで亡くなった時に調査が大変

   だった(そして祖父に兄がいた事を知る)

   おまけに後から祖父の父(私から見た曽祖父)の

   持ってる土地の固定資産税がまっててね?

   という手紙が新幹線距離の自治体から来て、

   寝耳に水だった。

   (そもそも曽祖父、祖父が小さい頃に行方知れずに

   なってたので、んな資産を誰一人として認識して

   なかった旨を届け出て相続放棄しました。

   土地と言っても入会地の山を村の住民で小分けして

   買ったもんだったし)



 犬神 6(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648452758147)より

  ・Better than Greek

   直訳で「ギリシャ語よりマシ」。

   「ちんぷんかんぷんだ、まったく理解できない」

   という意味の英語の言い回し、

   「それは私にとってギリシャ語だIt's Greek for me.

   を踏まえた言い方。ヨーロッパ各国で言語の部分が

   異なった「それは〇〇語だ」という言い回しが

   存在する。

   スペインとかポーランドとかは中国語だったかな。


  ・弘法大師こうぼうだいしが宿の礼に〜

  みなもとの頼政よりまさが退治したぬえの〜

   この後の怪物バラバラ説と合わせて

   日文研の怪異・妖怪DBにあるよ。


  ・『平家物語』の系列

   かつて琵琶法師による語り物だった

   『平家物語』はさまざまなところで文字起こしが

   行われ、さらに改良も施された。

   大まかにわけると、語り物に比較的忠実と思われた

   「語り本」の系統と、読み物としての改良が

   施されたと考えられた「読み本」の系統の二つ

  (真偽の程がまた新しい学説で変わるんだ)

   この系統の中に、諸本と言われる各系列の写本が

   あるわけである。

   あと『平家物語』外で割りと各地に(特に

   四国周辺に)、『平家物語』関連伝承が残っている

   ことが多い(真偽はともかく)



 犬神 7(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648507868320)より

  ・Cui bono?

   クイ・ボーノー。法学系ラテン語。

   「誰にとって良いか」

   bonoは一応原因ないし絶対的奪格、たぶん。

   要は「Why done it?」を「利益」に絞って、

   「Who done it?」を導き出す、みたいな考え方。

   もっと端的に言えば「得した奴が一番怪しい」


  ・寺社仏閣という霊能における権威の正道せいどう

   宗教と魔術・呪術は対立し、また自然科学と

   魔術・呪術は対立する。

   それは、宗教、自然科学共に常に秩序あるもので

   あったのに対し、魔術・呪術はその外側の混沌を

   一時的に秩序立てる術であったからであると

   考えられる。



 犬神 8(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648519862651)より

  ・論理学で言うところのconverse

   論理学の「逆」は、「AならばBである」の

   仮定と結論を逆にし、「BならばAである」

   にする。先生の補足通り、逆が常に真である

   とは限らない。

   例えば「板久咲絢芽ならばオカルトネタを仕込んで

   いる」の逆、「オカルトネタを仕込んでいるならば

   板久咲絢芽である」は真ではない(私以外にも

   オカルトネタ使う人おるやろ、ほれそこの

   オカルトタグから飛んで見るんじゃ)



 ποτνια θηρων 1(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648520317874)より

  ・アルテミスの呼び名の一つ

   意外とギリシャの主要神は呼び名を複数持って

   いる。

   ロビンの話で出したヘルメースのプシュコポンボス

   Ψυχοπομποςとか、ハーデースのプルートーン

   Πλουτων(富める者)とか。



 ποτνια θηρων 2(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648531718262)より

  ・言語とは使われる時点で多面体

   そもそも文字通りの意味のままで運用されることも

   なかったりする。

   これは各自、言語行為論のパフォーマティブと

   コンスタティブ参照。



 ποτνια θηρων 4(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648599177695)より

  ・ヘカテー

   'Εκατη。古代ギリシャ神話における月と魔術と

   冥界の女神。神話的にはあまりぱっとしないが、

   出土する呪詛板や遺されている魔術パピルスなど

   の中で召喚対象になったり、請願対象になって

   たりする。

   また、通常、三相女神と呼ばれる存在が三柱で

   ワンセット扱いなのに対し、一人で三面六臂さんめんろっぴ

   ヘカタイオンを形成するヘカテーはかなり強力な

   女神、とも考えられる。実際召喚呪文はしくじると

   こっちをりかねんので専用護符がある。

   呪詛板においては「ダムノー・ダムナ・

   リュコダムナ(ΔΑΜΝΩ ΔΑΜΝΑ ΛΥΚΟΔΑΜΝΑ)」

   と言った呼びかけが、アルテミスとヘカテーの

   両者に流用される。ざっくり意訳としては

  「我は支配する、支配する女、狼を支配する女神」に

   たぶんなる。

   参考資料は『古代世界の呪詛板と呪縛呪文』(京都

   大学学術出版会)、『秘密の古代ギリシャ 

   あるいは古代魔術史』(KADOKAWA)。

   加えて、そうした呪詛板データベースの「TheDefix

   Thesaurus Defixionum」

   (https://www.thedefix.uni-hamburg.de/html/heurist/?db=The_dema&website&id=41774)



 ποτνια θηρων 7(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648709633841)より

  ・力または剛毅ごうき

   一派的には「力」として有名か。

   16C〜18Cに普及したマルセイユ版タロットでは

   十一、黄金の夜明け団の解釈にもとづいた

   ウェイト版では八として扱われる(正義と

   入れ替え)通常の図像はここで言ってる通り、

   獅子と無限大の記号をいただく女性。

   ただし、本当に古いものの場合、髪の長い男性が

   描かれている事があり、旧約聖書の士師記の

   サムソンまたはギリシャ神話のヘーラクレース

   であるとも言われる(なおヘーラクレースには

   ネメアの獅子退治とアマゾネス女王の帯を

   貰うための女装エピソードがある)

   参考文献は『タロット大全』(紀伊國屋書店)。


  ・大量の牛の睾丸こうがんささげられたアルテミス像

   大量の乳房と勘違いされがち。

   実際は牛の睾丸こうがんらしいよ。


  ・出産の女神エイレイテュイアの代わり

   エイレイテュイアが来れなかったのは、

   いつも通り、ゼウスの浮気によるヘーラーの

   嫌がらせ。


  ・アルテミスの大地母神性の補足

   古代ギリシャにおいて、男子の急死はアポロンに、

   女子の急死はアルテミスに射られたと表現された。

   これは『イーリアス上巻』(岩波文庫)の注が

   参考。



 ποτνια θηρων 8(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648724179340)より

  ・カトリックのマリア信仰

   専用の祈りの文がいくつか作られるぐらいには

   普及している。曲も作られてるアヴェ・マリア

   とか。

   また、ロザリオは本来、マリアへの祈りを含め、

   どの祈りを何回唱えたか、カウントするための

   念珠である。


  ・結局三大天使以外堕天した

   天使信仰の過激化が危惧され、

   745年ローマ教会会議にて、時の教皇ザカリアスに

   より、ミカエル、ラファエル、ガブリエル以外の

   天使は全て堕天使である、との見解が示された。

   (後の見直しでウリエルが復活する)


  ・魔女の騎行、ガンドライド

   このガンドライドは「gandr-ride」らしく、

   gandrの部分はノルド語系の魔術などを指す語

   である。


  ・記紀は共に歴史として編纂へんさんされた神話である

   ある意味、神話としての健全な形はギリシャ神話の

   ように各地での信仰形態や状況が織り込まれた

   諸説が同時存在している状態である。

   これが『古事記』においては完全一本化、

   『日本書紀』においては諸説を併記しつつも基本

   一本化の方針で記述している。

   そこにあるのは、神話の権威をってして、

   正統な歴史とする意識である。なお、これについて

   是非はない(だってギリシャもキリスト教も他にも

   色んなとこがすでにしてるので)


  ・純粋なココア

   マジで純粋なココアはビターしかないぞ。



 ποτνια θηρων 10(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648856389841)より

  ・宍串ししくし黄泉よみをくくみて〜

   もう何もかも解説すべきで、何を解説すれば

   ええんや?ってしてる。

   解説担当の私「もっと簡潔にしろ」vs

   書いてる私「詠唱はこうでなくっちゃね」である。

   少なくとも以下の通り大量の枕詞まくらことばを使ってる。

    ・宍串ししくしろ…黄泉よみ

    ・垂乳根たらちねの…母

    ・木綿花ゆふはなの…さか

    ・柞葉ははそはの…母

    ・粗金あらかねの…つち

    ・久方ひさかたの…天

    ・葦垣あしがきの…ふる

    ・空蝉うつせみの…人

    ・射干玉ぬばたまの…夜

    ・五月闇さつきやみ…くら

    ・ささがねの…くも

    ・五月蝿さばへなす…騒ぐ

    ・大口おおくちの…真神まかみ

    ・鹿猪ししの…行きて死なむ

   ちょっと頑張ると全体は以下の通り。

   「冥界と栄える生命を司る母よ、地の上に

    その腹から産み落とした兄弟をいだき、

    空に繰り返し尽きて満ちながら夜を渡る月の、

    古き女神にして、人ならざる異界をべる

    女神よ。

    獣をかたわらに従わせ、夜を彷徨さまよう荒々しい神

    にして、罪人や子供の軍隊を引き連れる女神よ。

    水の泡の如くに産まれては限りある一生を導く

    太母にして、常ならずの母にして、墓にいる

    女神よ。

    異界をべ、人のことわりを知らぬといえど、

    その雲の合間に雷が鳴り、光るならば、その光の

    中に全く見えないということもあるまい。この

    心の影に潜むは、荒ぶり理を知らずに騒ぐ犬の

    ようなものども。これもまた、異界のことわりに従う

    獣なれば、この取るに足らぬ獣たちは貴女が

    腹から産まれたものにして、狼の末裔たち。

    私の身も彼女の身も、貴女の前では塵芥ちりあくたに等しく、

    取るに足らぬ身で儚いことを試せども、命を

    かけるこの心意気を見て、不憫に思い見捨てる

    ことがないならば、この犬のようなもの共の

    主たるものを祝福し、守ってください」

   自分で作った(間違ってるかもしれない)古文を

   自分で訳すってなんて羞恥プレイ?

  (なお今後も羞恥プレイはある)



 ποτνια θηρων 11(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330648981366865)より

  ・千引石ちびきのいわ道反大神ちがへしのおほかみ

   千引石ちびきのいわ伊邪那岐いざなぎ

   黄泉よみの国から帰ってきた時に、黄泉平坂よもつひらさかふさいだ

   千人がかりで動かせるような大岩。

   これを神格化した場合、道反大神ちがへしのおほかみという。


  ・菊理媛きくりひめ

   『古事記』には出ず、『日本書紀』のみに登場。

   千引石ちびきのいわ越しに会話する伊邪那岐いざなぎ伊邪那美いざなみ

   橋渡しをしたとされる女神。

   菊理きくりくくりに通ずると考えられ、

   一般的に巫女の神格化と解される。



 ποτνια θηρων 12(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330649046290819)より

  ・ギョッル川の金の橋の乙女と、霧の世に構えられた雪き付けらるる館の女主人

   金の橋の乙女はモーズグズ、霧の世はニブルヘイム

   (ヘルヘイムはニブルヘイムの一部ないし

   同一視)、雪き付けらるる館は

   エーリューズニル、女主人はヘル。

   ということで、オーディンからの繋がりで、

   北欧神話に寄せている。


  ・ときじかる

   その時でない。

   この語を用いた有名な言葉として、非時香菓ときじくのかくのこのみ

   =たちばながある。



鷹視と狼歩の語らい 1(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817330649183441346)より

 ・鷹視狼歩ようしろうほ

  鷹のような鋭い目と狼の獲物を求めるような歩き方。

  残忍な人物の形容ないし勇猛で隙を見せない豪傑の

  形容に用いられる。



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【副読本なのか注なのか】怪異から論理の糸を縒る 板久咲絢芽 @itksk_ayame

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