2 山と神隠し side B

温まりすぎた結果がこれだよ!


1 旧里に帰れば(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555341033580)より

 ・旧里に帰れば

  side Aの「あやまち仙家せんかに入りて〜」と同じく

  大江朝綱おおえのあさつなの『二条院宴落花乱舞衣序』の

  一節の一部分。


 ・海賊の眼帯

  別に目をやってしまったわけではなく、

  常に眼帯をつけておくことで片目を暗順応あんじゅんのうした状態に

  する、と言われるやつ。


 ・太鼓やかね

  神隠しがあると、山で太鼓やかねといった

  鳴り物を鳴らしながら、口々に「返せ」と

  はやし立てるという。



2 疎にして漏らさぬ目(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555424496771)より

 ・天保山てんぽうざん日和山ひよりやま

  日本の低い山のかつての一位と現在の一位。

  もともとは天保山てんぽうざんの方が低かったが、

  東日本大震災の津波によって削られた日和山ひよりやま

  方が低くなってしまった。



4 安全装置(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555445093147)より

 ・虹彩の濃い〜

  虹彩は明るさによって瞳孔の大きさを調節し、

  取り込む光の量を調節する、いわばシェード的な

  役目がある。

  しかし虹彩のメラニン含有量(これにより虹彩の色が

  変わる。黒に近いほどメラニン含有量が多く、

  青は少ない)によって、瞳孔のサイズが同じでも

  実際に採取される光量=虹彩でさえぎられる光量は

  限られる。なおメラニンはギリシャ語の黒を意味する

  語が語源の通り、黒系の色素である。

  洋ゲーのデフォルト画面が日本人にとって暗すぎて、

  本邦のゲームのデフォルト画面が西欧圏の人間に

  とって明るすぎる、というのはこれによる。



5 壺中異界(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555465545146)より

 ・浦嶋子うらしまこ伝説

  こちらでは亀が押しかけ連れ去り女房してる。


 ・都良香みやこのよしか神仙策しんせんさく

  『和漢朗詠集』に収録されてる一節。

   三壺雲浮 三壺さんこに雲浮かび

   七万里之程分浪 七万里のみちなみかつ

   五城霞峙 五城ごじょうかすみそばだ

   十二楼之構挿天 十二楼じゅうにろうかまえ、天をさしはさ

  三壺は本文中の通り。

  七万里については『太平記』内で玄宗げんそう皇帝が

  神仙の術を身に着けた臣下に連れられ死んだ楊貴妃に

  会いに行くところで、「天海てんかい万里ばんり波濤はとう

  しのぐに、あはいへだてて、蓬莱ほうらい方丈ほうじょう

  ・瀛州えいしゅうの三の島あり」と語られるように、

  大陸から蓬莱ほうらいへの具体的な距離として

  扱われたらしい。

  五城ごじょう崑崙山こんろんさんにある金と玉でできた

  城で、神仙の住処すみか

  十二楼じゅうにろう崑崙山こんろんさんにあると言われる

  十二の高楼のこと。


 ・生命の水aqua vitae

  アクア・ウィタエ。

  (水aqua + 生命vitaの属格vitae)

  世界の多くに若返りの泉や不老不死の水、

  よみがえりの泉の水といったものが登場する

  昔話は割とある。参考資料は『世界の水の民話』

  (三弥井書店)、『読みくらべ世界民話考』

  (松柏社)等。

  まあ、ウイスキーの語源(ゲール語訳経由したので

  字面がぜんぜん違う)だったり、アクアビットの語源

  (こっちはaquavitなので順当)だったり、ウォッカ

  が水と同根だったりするし。


 ・カノプス壺

  古代エジプトのミイラ作りで抜き出した臓器

  それぞれを保存していた壺。それぞれの臓器を

  守護する神の姿を模す。



6 瓢箪ひょうたん釣鐘つりがねhttps://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555489820792)より

 ・瓢箪ひょうたん釣鐘つりがね

  月とスッポン、雲泥の差と同じ。


 ・羊脂ようし玉浄瓶ぎょくじょうへい紫金しきん紅葫蘆こうころ

  『西遊記』の金角銀角との戦いで出てくる名前を

  呼んで返事をした相手を吸い込んで閉じ込める

  アイテム。

  さらに閉じ込められた相手は酸で溶かされる。

  (悟空は二回ぐらい閉じ込められたはず)

  なお、この時呼ぶ名前は偽名であっても使用者が

  認識している名前ならば良いらしい。

  それ、名前を呼ぶってギミックいる?

  結局、だましてすり替えて乗り切ってたはず。


 ・八仙

  ここで名前の出てる張果老ちょうかろう李鉄拐りてっかい以外は、

  漢鐘離かんしょうり鐘離権しょうりけん)、何仙姑かせんこ藍采和らんさいわ韓湘子かんしょうし

  呂洞賓りょどうひん曹国舅そうこっきゅうが現在固定。

  内、何仙姑かせんこは確実に女性。

  紅一点と言い切れないのは藍采和らんさいわ

  いろいろ不詳扱いなのがいけない。



7 Miniascape(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555513630448)より

 ・Miniascape

  英語で箱庭。


 ・鹿

  中国語は表意文字であると同時に表音文字的な側面も

  あるのでこういう事が起きやすい。

  特に文字種が限られたと考えた上で古代歌謡を

  見ていく時には同音の別のものを指してる可能性も

  置いて文面を見なければならない。


 ・月の光Au Clair de la Lune

  歌詞の流布においてplumeペンlume

  取り違えが起きているため、一部歌詞の文意が

  わけわからなくなっている。

  なお曲はサン・サーンスの『動物の謝肉祭』の

  「化石」で引用されてる部分があり、シンプルな

  メロディなので子供向けピアノ教本等でも使用

  される。弾いたことある(ピアノ経験者)


 ・音韻変化踏まえないとなマザーグース

  「Who Killed誰がコマドリ Cock-Robin?殺したの?

  の墓穴を掘るくだりがそれ。

  一般的には五連目の以下。

   Who'll dig誰が墓穴 his grave?掘りましょう?

   "I", said the Owl,「私」とフクロウが言いました

   "with my pick「私のツルハシ、 and shovel,私のシャベル

   I'll dig his grave."これで墓穴掘りましょう」

  真ん中二行末尾が韻を踏むのだが、現代英語だと

  Owlオウルshovelシャベルは韻にならない。

  しかし、当時の発音上ではこの二語で韻が踏める

  らしい。



8 八尋やひろ白智鳥しろちどりhttps://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555532064825)より

 ・八尋やひろ白智鳥しろちどり

  日本武ヤマトタケルの葬儀直後に現れたという鳥。

  日本武ヤマトタケルの魂の化身と捉えられ、妻や

  子らはこの鳥を嘆きながら追いかけたという。

  なお、純粋に鳥は世界的に魂の化身や

  天からの使いとよく考えられる。

  鳥葬とかは後者の考え方で天に連れて行ってもらう、

  という感じなわけです。



10 梅を投げ終えても(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555573533741)より

 ・摽有梅ひょうゆうばい

  『詩経』召南しょうなんなげうつに梅有り。

  三連から成り立つが、ここでロビンが引き合いに

  出したのは最終連。

  儒教解釈は置いといて、梅が尽きただけの

  解釈と籠投げ解釈がある。 


 ・近代以降、当時の風俗〜

  特に聞一多ぶんいった(清末期〜

  中華民国初期の)漢学・神話学者がそうした研究を

  していたという。

  なお「子怪力乱神不語」を「怪/力/乱/神」でなく

  「怪力/乱神」ととらえるのは『詩経』に

  祭礼系のものと取れる歌があるからでもある。

  大雅とか。


 ・木瓜ぼくか

  『詩経』衛風。

  これも三連で成り立ち、一連目が

   投我以木瓜 我に投ずるに木瓜ぼくかもってす

   報之以瓊玉 これむくゆるに瓊玉けいぎょくもってす

  で始まる。

  その後ろは「末永くよろしくしましょう(意訳)」

  という定形で、変化も一連目の木瓜と瓊玉が

  二連目は木桃と瓊瑤、三連目は木李と瓊玖になる

  というとても形が整った詩。



11 並び立つべきか、立つべからざるか(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555580019794)より

 ・デルポイ

  デルフォイΔελφοι。より現代発音だとデルフィ。

  φの発音を古代に寄せるか現代に寄せるかの話。


 ・否定辞のα-

  少なくとも古代ギリシャ語において。

  α-+θανατος「死」のαθανατοιで「不死の」、

  α-+ληθη「忘却、隠匿」のαληθειαで

  「真実(≒非隠匿)」とか。


 ・アンブロシア(現代)

  アメリカ発祥と目されるフルーツサラダ。

  缶詰ないし生のパイナップルとオレンジ、

  ココナッツ、ミニマシュマロ、イチゴ、ブドウ

  マラスキーノチェリー、砕いたピーカンナッツなど

  のフルーツやナッツとマヨネーズ、カッテージ

  チーズ、サワークリーム、ホイップクリーム、

  クリームチーズ、ヨーグルト等をあえて

  一晩寝かせて味を落ち着かせたもの、らしい。

  書いてて胸焼けするし、アメリカ発祥で間違いない

  気がする(偏見)


 ・『イーリアス』のアキッレウス

  母である女神テティスは幼いアキッレウスを

  冥界の川ステュクスの水につけて、身体の大部分を

  不死にしたが、その時唯一掴んでいたかかとの部分が

  弱点となり、トロイア戦争においてパリスにここを

  射抜かれて死ぬ。

  なお、両のシーン共に原本は散逸さんいつした他の

  叙事詩の中にあり、『イーリアス』のアキッレウスは

  六、七割方怒りのストライキしてる。


 ・エレウシスの祭儀につながるデーモポーン

  エレウシスの祭儀は特に豊穣の女神デーメーテール、

  およびその娘であるコレー/ペルセポネーを信仰する

  ものだった、と言われる。秘されるものだったため、

  断片的にしか伝わっていない。

  デーモポーンは、コレーがさらわれた際、

  デーメーテールが放浪ストライキをきめてる時に

  親切にしてくれた国の王子で、当時幼子のこの

  デーモポーンをデーメーテールはパンのように

  ことで不死にしようとした。

  ところがそれを見たデーモポーンの母親が悲鳴と共に

  止めたため、デーモポーンに不死はさずけられ

  なかった。


 ・ディオニューソス

  陶酔と酒と葡萄と演劇と狂乱の神。

  ゼウスの浮気によってヘーラーの怒りを買うは

  最早ギリシャ神話のお決まり中のお決まりだが、

  浮気相手だけでなく子に向くのもお決まり。

  その中から明確に神になったとされるのは

  一般的にヘーラクレースとディオニューソスの二人

  であるが、ヘーラクレースが神になったのが死後で

  あったのに対し、ディオニューソスは生きたまま

  じゃんじゃんその神性を発揮し、信者を増やして、

  最終的にヘーラーのせいで死んだ母親セメレーを

  冥界から救い出すなどして己を神と認めさせた。

  完全に実力ちから技。

  オリュンポス十二神に挙げられる場合、

  基本ヘスティアーと入れ替わり(ヘスティアー自身が

  その座をディオニューソスに譲ったという神話も)

  古くから存在した神に僻地へきちのローカルな神々が

  集約した……みたいな成り立ちくさい。


 ・タンタロスは神々をだまして〜

  タンタロスが調理した息子、ペロプスは

  ほとんどの神々が口をつけなかったので

  蘇生させられたが、丁度コレーがさらわれた時分で

  茫然自失のデーメーテールだけ食べてしまい、

  その左肩は元に戻らなかった。なので、

  デーメーテールは、ペロプスに象牙の左肩を

  提供したという。

  まあ、神々を試す時点でタンタロスは傲慢判定に

  なるわけなのだが。


 

12 思考より速きもの(https://kakuyomu.jp/works/16816927863205636014/episodes/16817139555626642913)より

 ・イクシーオーン

  義父を謀殺した上、神々の宴席に招かれた際に

  ヘーラーに横恋慕……というか散々浮気されてる

  ヘーラーに一緒にゼウス裏切ろうぜと持ちかけよう

  とした。

  これを事前に察知したゼウスは雲でヘーラーの似姿、

  ネペレーを産み出し、イクシーオーンはこれと

  まじわった。

  そうしてイクシーオーンはゼウスの命で燃える車輪に

  くくりつけられ、未来永劫ぶん回される事となる。

  一方でネペレーはこの時の子を産み、これが

  半人半馬のケンタウロスの祖となった。


 ・ルーツの違うケイローン

  クロノスとニュンペーのピリュラーの子であり、

  系譜的にはゼウスの異母兄弟。

  ケンタウロスと同等の姿(上半身が人、下半身が

  馬の首から下)で描かれるが、壺絵の歴史を

  さかのぼると、本来は丸々一人分の人の

  腰ないし臀部から馬の後ろ半身が生えていた形

  らしい。つまり前足は人だった。

  不死性を持ち、多くの英雄を育てたと言われるが、

  ヘーラクレースの持つヒドラの毒の矢が誤って

  当たり、その苦しみから逃れるために、不死性を

  プロメーテウスに譲って死んだという。


 ・管狐くだぎつね

  管に入るほどの狐で、使役される怪異。

  使役するものに周囲から奪った富をもたらす、とも。


 ・六部殺ろくぶごろ

  六部ろくぶとは全国六十六箇所の霊場に、

  法華経を一部ずつ納める巡礼者のこと。

  六部殺ろくぶごろしはその六部ろくぶを泊めた

  貧しい百姓が、六部ろくぶの持つ金品に目がくらみ、

  六部ろくぶを殺して金品を奪う。

  百姓は金持ちとなり、やがて子もできたが、この子は

  口をかない。ある夜にむずかるその子を

  便所に連れていくと、突然その子は「お前に殺された

  のもこんな夜だった」と言って、殺された六部ろくぶ

  顔となっていた、という話。

  現代怪談・都市伝説の「今度は落とさないでね」との

  関連も興味深い。


 ・神食theophagy

  神または神の肉体とされるものを食らうこと。


 ・ウートガルザ・ロキのチート

  ロキはロギ野火との大食い、シャールヴィは

  フギ思考との徒競走、トールは酒飲み勝負

  (実は酒ではなく海)、エリ老いとのレスリング、

  猫の持ち上げ(実は猫ではなくヨルムンガンド)で

  それぞれ負かされ、ウートガルザ・ロキから種明かし

  を食らう。

  つまり全てを燃やし尽くす火よりも大喰らいなものは

  おらず、思考ほど現実よりも速い者はなく、

  老いに負けぬ者などいないし、海を飲み干せる者も

  その海の底にいるヨルムンガンドを持ち上げられる

  者もいないのだ、ということ。

  『ギュルヴィたぶらかし』が詳しい。

  なお、ロキとロギの名が似てるのはロキの語源が

  火や光の系統の語からというのが原因と思われ。

  つまり語根が同じ。


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