蔓の先に、私が見たものは。

 主人公は築50年の古い家に住む「私」。母と同居しながら、会社で働き詰めの毎日を送っていた。そんな主人公の部屋に、何かが転がる気配と音がした。ネズミか、虫か、と考えながら眠りにつく。しかし次の日、主人公が目にしたのは、部屋に転がる豆だった。
 会社から帰宅すると、何と自室が蔓に覆われていた。まさか、今朝の豆が発芽して、一日で部屋を覆たのか? 
 そして、主人公が蔓の先に見たものは――。

 神話学において蔓性植物は、普通の植物とは反転の関係にある。さらに、文学において蔓は、時間軸を捻じ曲げる。知識と技巧が合致した純文学に近い作品だと思った。

 是非、御一読ください。

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