9. 目覚め
悪い夢を見ていたような気がする。
長い間。
僕は体験したことがないほど爽快な気持ちで窓の外を見た。
どれくらい、眠っていたのだろう。
ベランダ側の窓を開けようか。きっといい風が吹いてる。
僕が立ち上がり、窓に手をかけると宮本も起き上がって来た。
「お前。やめろよ。」
「なんでやねんな。空気が淀んでるから、換気するだけやで。」
僕はとっても上機嫌だ。
「アレはなんなんだよ。」
「アレ?」
僕には全くわからない。
「さっきの、この家の、なんだあの!」
「もう、良いんじゃないの?どうでもええやん?僕ら幸せやんか。みんな一緒やし、今日はいい天気やで。」
再び窓を開けようとすると、大きな手が僕の手を止めた。
「藪内君。おはよう。」
「なんかあかん気がすんねん。窓開けるんはやめとこ?雨降ってるし。」
「そない?」
僕はおとなしく窓を開けるのをやめてあげる。優しいよね。
「お前。おかしいよ。ずっと思ってた。はっきり気づいたのはついこの間だけど…。だいたい、お前ら誰からノックの話を聞いたんだよ?」
「何言ってんのみやもっちゃん!」
可笑しい。笑える。今までの宮本のジョークの中で一番笑える!
おかしくて堪らなくて、僕は笑い転げてしまった。
「ノックの話は黒野から聞いたんや。聞き終わった位にお前が来て、俺めっちゃビビってん。で、お前の奢りで飯に…。」
「黒野って誰だ。」
宮本の顔が真剣すぎる。笑える。堪らなく可笑しい。そんなことも知らない!
「え?3人で話してるとこにお前が来て俺のこと大声で呼んでんで?」
「知らない。このあいだ大声で藪内呼んだときは、二人しか居なかった。お前らが二人でぼーっと座ってるから呼んだんだよ。一体お前ら誰と話してたんだ?」
僕と藪内君の顔を交互に見ながら宮本君は何を考えているのかな?とっても勇気があるよね。
「どうでも良いんじゃないの?もう良いやん。窓も開けようが開けまいが関係ないねんで。宮本君。」
あはは。可笑しいったらありゃしない。僕の顔になんか付いてるのかな?
「もう関係ないんやで。外側から入って来るものなんかいない。だってさ。黒野さんはもうずっと一緒にいるんやから、ね。」
ね。ずっとずっと一緒よ。
ごま 仮墓地ヤン @kabotyann
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