8. 反響
黒野さんは長い黒髪を毎朝毛先からしっかり梳かす。重みのある、絹糸のようなまっすぐな黒髪。冷たい感触。
櫛が通っていく規則的な音が僕にも聞こえる。
ああいい匂い。
「ねえ。遊ぼ。」
「ねえ。なんで知らないふりをするの?」
黒野さんは、藪内君がちょっと好き。僕は黒野さんの匂いが好き。髪が好き。
ああ黒野さん。
鏡ごしに彼女は微笑んで、僕もにっこり笑うんだ。
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