ヒーローの目指す先とは――

最初は「木徳直人はミズチを殺す」とは違う作風かと思いきや、物語が進むにつれて、段々しに不穏な気配が立ちこめてくるこの感じは、前作に通じるものがある。

主人公が生活保護を申請して無職というところからはじまるので、そこから這い上がるカタルシスを感じさせる物語と思いきや、良い意味で期待を裏切る展開が続く。

直也のヒーロー観と、この世界の裏側の秘密がどう繋がっていくのか?
ビッグ・セックとは何者か? ヘラクレスとは本来なんなのか? 様々な謎がある中で、作中の伏線がどう絡み合っていくのか、先の展開が読めない。

また、ビッグ・セックは、その魅惑さと彼女の持つ秘密がエロティックを演出している一方で、その不気味な特性から不安感も覚える、非常に魅力的なキャラクターとして映る。

直也と兎羽歌ちゃんの関係性はこれから良い意味で発展していって欲しいが、前作や本作の流れを考えると、そうそううまくはいかない気もする。

前作でも感じたが、やはり本作でも戦闘シーンは臨場感がある。
一文一文が短いのでスピーディに読めるが、作中の時間は何故か引き延ばされたように感じられて、一瞬一瞬の緊張感が見事に演出されている。
そこに、作品の設定が新たな展開を見せることで、その面白さをより一層引き立てている。

この先、どのように謎が明らかにされ、キャラクターたちがどのような結末を迎えるのか、楽しみな作品である。

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