焦がしたカラメルは苦すぎた

フラれる度に「ピアスを開けてほしい」とねだってくる野々華と、それに応える深月。

ピアスを開ける時の深月の心の魔法。
親友の野々華が深月を大切に想う気持ち。
ただ、二人でいられればそれだけで心が嬉しくなるような、そんな時間を大切にしている深月。

そんなある時、野々華にとって良き転機が訪れます。
糖を高温で加熱して茶色くなると同時に甘い香りを生じる――いわゆるカラメル反応がありますが、深月の心の砂糖はそのような反応は示さず、焦げ付いた苦みを発します。

ピアスホールを開けた痛みは失恋の痛みを和らげる緩衝材なり得るのか。
はじめてのピアスを開けることで、野々華の痛みを知った深月。
彼女の心からは、既に心の魔法は消え失せていた。

同性愛で、大事に想うからこそ、伝えられない一言。
繊細な文体と、登場人物に寄り添うような心情を描く本作は、それらを情緒的に伝えてくれます。

是非、ご一読ください。

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