同種の傷に対してさえ、あなたとわたしの想いは違う――その普遍的な痛み
- ★★★ Excellent!!!
互いに親しく思っている、ふたりの人間。
だが一方が抱く好意の形は、他方が抱く好意の形と同じではない――
同性愛が主題となる物語で頻繁に現れる図式ですが、考えてみれば異性愛であっても事情は同じように思われます。
ふたりが同じ人間ではない以上、抱く思いの形が異なるのは当然のこと。
ただ異性愛の場合、様々な種類の好意がすべて「恋愛」へ乱暴にくくられがちで、それゆえに好意の齟齬が表面化しにくいのかな、という気がします。
前置きが長くなりましたが、本作は、そうした「好意の違い」を鮮やかに描いた短編です。
失恋の痛みを、別種の痛みへ託すふたりの女の子。
しかし、同じ痛みを体に刻んだとしても、そこに乗った心の痛みは、それぞれ異なる形をしている。
物理的な痛みが同種であるのに――いや同種であるからこそ、乗った想いの違いが鮮やかな対照をなしている。
そして、中心となる物理的な痛みのみならず、周辺の事物も繊細に描かれ、共有された想いと共有されなかった想いとがそれゆえに際立つ。
本作はそんな話であるように、私は感じました。