彩を取り戻し埋もれた声を聴け。絵画を巡り記憶を手繰る少年少女の旅物語。

 これは、起きるかもしれない未来の物語。
 未曾有のエネルギーショックによって価値観が逆転し、芸術や技術といったものが本来の価値を持たなくなった世界。ストーリーは、絵画修復家の主人公ルカが森の中で記憶喪失の少女と出逢うことから、大きく動き出します。

 背景に横たわるのは「絵画をエネルギーに変換する」という新しい価値観。物語は現実世界の地理や歴史に沿っており、ルカの行う絵画修復の過程は魔法のようなめざましさがありますが、科学的な方法に則った現実的なものです。
 そこに記憶喪失の少女ニノンが持つ「絵画の声を聞く」という不思議な力が相まって、どこか懐かしいジュブナイルファンタジーの色合いを魅せてくれるのです。

 襲撃事件を切っ掛けに、奪われた絵画を追って旅を始めるルカたち。訪れた先で出逢う人々と、彼らが所有してきた古い絵画。一期一会でありながら、少しずつ仲間も増え、埋もれていた過去の縁が浮かび上がってきます。
 どこか物寂しく退廃した世界の中で、彼らは何を見つけ、どこに辿り着くのでしょうか。
 じっくり読めるSFファンタジー、ぜひご一読ください。

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