概要
其の十年は、ある男には愛しい逢瀬であり、ある女には耐え難い苦行だった。
豪農の家系に産まれた川上弥兵衛(かわかみ やへえ)は、幼くして父を亡くし僅か齢七歳で家督を継ぐ。その身の上から母は縁談をしきりに立てていたが、本人はあまり気が進まなかった。やがて周りからは、葡萄の栽培に躍起になっている朴念仁と揶揄される。そして、川上はついには妻を迎えぬまま、殺されてしまうのだった。下手人は、若き麗しき青年。事件の捜査の中で、青年と弥兵衛の悲しい物語の始終が明らかにされてゆく。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!時代小説ほど読み辛くなく、時代小説のように豊富な表現力のあるミステリー
時代小説らしい美しい日本語の並びを感じました。とても情景描写が上手で、雰囲気にスッと飲み込まれるようです。
しかし、時代小説というと、とっつきにくい印象をもつ方もいるかと思いますが、この小説は大変読みやすい。その表現の意味、漢字の読み方が分からなくても他の言葉、前後の文章、漢字の印象から十分に読み取ることができるでしょう。言葉選びが上手です。
さらに、ミステリーというのが惹かれます。筆者のあらすじになります「ある女」は出てきていませんが、女っ気のない弥兵衛がなぜ下手人に殺してもらうことになったのか……続きが気になる作品です。