武道を志す青年が様々な格闘技と出会う自伝的な青春小説

警察官を目指していた青年、南郷は試験に落ちてしまいバイトにあけくれながら、もう一度警察官になろうと悪戦苦闘の日々を送っていた。
そんな時にある格闘技雑誌の記事で大東流合気柔術の記事を見つけて、自分を変えるきっかけになるのではないか、強くなれるのではないかと見学をすることに。
そこから個性的な兄弟子たちとの出会い、そして合気柔術をはじめとする格闘技の世界で鍛錬する日々が始まる。

作者の波里久さんならではの人物の心情を鮮やかにかつユーモアをこめて描いている文章は読みやすく、ほっと安心させられます。

私自身は格闘技を体験したことがないのですが、「合気柔術」「意拳」「柔道」「合気道」「香取神道流(剣術)」といったいろいろな分野の格闘技に物怖じせずに足を踏み入れて鍛錬する様子を実体験ならではの血の通った内容で描いていて「こんな世界があるのだなあ」と感心させられる限りです。

若者らしく時に悩み迷いながらも、自分を変えようと格闘技の世界で努力する主人公の姿は好感が持てます。

タイトルの「武張る」というのは「武士の如く強く勇ましそうに振る舞う」ということだそうで、強くなれるかどうかはわからないけど努力してやってみようという前向きでそれでいて少し力の抜けた柔らかい感覚を端的に表現していて、この小説のテーマを上手く象徴していると感じました。

格闘技に興味のある方は読んで損はありません。

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