ウサギを追え、夢を追え、ただひたすらに前を向け

この物語は、単なるマラソンの話なのか。

この問いに、私は声を大にして否と答えたいです。
なるほど、確かに描かれているストーリーはそうかもしれません。
描写も見事。
シーンの繋ぎも、映像の手法を意識されているとのことで、驚くほどなめらか。

けれど私が真に感銘を受けたのは、この作品に込められたメッセージです。
これがひどく、書き手としての私に刺さりました。

書き手の皆様も、執筆中に感じたことはないでしょうか。

最初は「自分が楽しい」で終わっていたはずの執筆が、いつしかPVが伸びない、フォロワー数が増えない、評価されない、と悩みの種になる。

自分の作風は流行に乗っていないのか。ならば、流行りの物語を書いてみれば、受けるんじゃないのか…そんな、麻薬のような誘惑に負けそうになる時があります。

けれど、本当に大切なのは、貴方自身の純粋な願い--「評価されるか、されないかではなく」「あなた自身が書きたいと、伝えたいと思ったものを書くこと」なのではないか。

この物語は静かに、力強く、そう問いかけてくれている気がします。
ただひたすらに前を睨んで、誘惑に屈せずに前を突き進む……そんな勇気を与えてくれた本作に、最大限の賛辞を。

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