亡くなった友人にかわってニューオーリンズからシカゴへ旅をし、その道すがら在りし日の友人に思いを馳せるというお話です。日本が舞台でも成り立たなくはないのですが、アメリカを舞台にしているからこその味が出ていると感じました。友人が何を考え、何を思っていたのか?彼女が主人公に伝えたかったであろう思い、主人公が彼女に伝えたかったであろう思い、そういったものが端々に見え隠れしていますが、それはもう互いに伝えられない。切ない情緒に溢れた作品です。
まるで、その景色を見てきたかのような、感情と絡む日常の描写が本当に美しくも切ないです。もとより、湖上様のエッセイの大ファンなんですが、日常の切り取り方というんでしょうか。とにかく、そういう視点が存分に本作を彩っているなと思います。決して、声高に心を描写している訳じゃない。なのに、読み進めるうちに、マリアの気持ちが痛いほどに伝わってくる。家出の目的地に着いて、ジャクリーンの踏んだ土地を目にした時、マリアは…そしてあなたは、何を思うでしょうか。
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