あとがき

 十代の頃に、何か不思議な夢を見ました。

 当時の僕は何を思ったか、たしか半年ぐらいかけて、原稿用紙数枚分の夢の記録を書き上げました。遅筆ちひつにも程がありますが、まあそれだけ真剣だったんでしょう。

 第二夜の、「月のない夜の月の話」の一部が、その時の記録になります。

「一部」というのは、当時の記録そのままではないからです。

 現在の僕が、当時の僕の若気わかげの至りとも思える小っ恥ずかしい表現やお年頃の危険思想やあれやこれやを穏当おんとうなそれに書き換えたりして、まああんな感じになりました。

 夢というのも不変のものではなく、その時々によって編集されていくもの、またはされてしまうものなのでしょう。


 よく「夢のようなことを」とか、「夢見がち」と言いますが、「夢」も人生の一部である以上、無視できない比重があると思うのです。かの列子れっし荘子そうしも、夢についてはかなり真面目に論じてます。

 僕は夢日記のようなものをつけてませんが、気になった夢はわりに長く覚えていて、たまに書き出したりしてました。第ニ夜が最初の記録です。

 今回の『月十夜 掌編集』は、それらをアレンジしたり、あるいは素材そのままっけたりしました。少しでも楽しんでいただけてたら、光栄です。


 最後になりましたが、本作を手にとって下さった方々、読んで下さった方々、応援してくださった方々、本当にありがとうございました。


 (追記)

 ついでに、昔の僕にもありがとう。

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月十夜 掌編集 長門拓 @bu-tan

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