潮騒足跡を消して

 カモメの鳴き声が聞こえてきそうな雰囲気。誰が悪いというのでもない。さりとて主人公の気持ちを批判したり干渉したりできるのでもない。海水に濡れて輝く小石や貝殻を手にする内に乾いて色が褪せるように、起きた出来事そのものが少しずつ乾いていくのを主人公は望みもし恐れてもいる。
 波はただ寄せては返し続ける。