食欲は地球を救いも滅ぼしもする

 ダチョウは昔、長野県で一度食べたことがあります。大変美味でした。その後、『鉄鍋のジャン(画 西条真二 監修 おやまけいこ 秋田書店 敬称略)』という漫画でダチョウ料理が取り上げられ、食材としてのダチョウの魅力と共に調理に伴う労苦を知りました。トナカイはまだ食べたことがありません。テレビやネットで見たくらいです。
 日本ではまだまだ未知数な部分を多く残すそうした生き物を、商用として一人一人の消費者に届けるのはどれほど恐ろしい苦難の連続でしょうか。『北の国から(原作・脚本 倉本 聰 フジテレビ 敬称略)』でも、経営破綻したり過酷な生活に耐えられなくなったりした酪農家が夜逃げする場面が出てきました。
 ご作品には魔法もビームライフルもマシンガンも一切登場しませんが、これはもう決闘だと思います。穏やかで理知的な筆致をもって淡々と描かれる、食物連鎖と経営と異文化共存のための決闘。それらがタペストリーかなにかに縫い上げられて、目の前に現れた気分でした。 以上。