翔龍騎伝ドラゴン・ライダー!<龍と女神と幼馴染と?!>
さば・ノーブ
第1話 ドラゴン・ライダー?!
麦藁の臭いが心地よい
心地よいリズムが眠気を誘う
見上げた空に浮かぶ白い雲が、ゆっくりと風に流されていく
のろのろと進む荷車の上で、茶色の髪を風に靡かせる少女が麦藁の上に寝そべっていた。
「腹・・・減った・・・なぁ」
誰ともなく呟かれる声。
「まだなのか?もう何時間経ったと思ってるんだよ?」
誰に・・・誰が聴いているのか。
微かに漏れ聞こえてくる声が訊ねているみたいだが。
「喋んな・・・うっとおしい」
これは茶毛の少女が放った声。
男喋りなのか、少女の姿からは想像しにくい言葉が漏れる。
荷車の上で横になっている茶毛の少女。
旅支度と言えば良いのだろうか。
身の丈ほどもある大きなリュックを傍に置き、身体を包むほどもあるマントを着けている。
茶色の前髪は両頬に掛かる位で両側に垂れ、左髪を括った紅い髪飾りが目立つ。
気怠そうに開かれた瞳は、緑色に輝いて観える。
閉じられた唇は厚くもなく薄いでもなく、年若い少女の持つ可憐さが窺えた。
年若い・・・そう。
少女は幼い・・・一人旅をしているというのに?
年の頃はどう見ても10歳は越えていないだろう。
少女と少年とを見分けるのも一苦労しそうな年頃・・・
荷車に揺られる少女・・・言葉使いからもしかして少年かと思われたが。
「お嬢ちゃん、そろそろ着くぞぃ?」
荷車を操っていたお爺さんが、荷車に振り返って教えて来る。
どうやら、少年かと思ったのは思い過ごしの様だ。
お爺さんの声に漸く身を起こした少女が。
「そっか、もう着くんだね?オレゾンって街に」
麦藁越しに前方を見渡した。
「やっとかよ・・・腹減り過ぎて死にそうだぜ?」
また・・・声が聞こえる。
だが、この荷車には操るお爺さんと少女しか乗ってはいない様なのだが。
「うるせぇーよ、リュート!お前は食べる事しか脳にないのかよ?」
これは少女の声。
男喋りな少女は誰に向かって話したというのか?
「ほっほっほっ、お嬢ちゃん。お友達はお腹が減り過ぎているんだねぇ」
牛を操るお爺さんが麦藁帽子を摘まんで少女に振り返る。
「こいつかい?良いんだよ、どうせ普通のご飯じゃ満足しないんだから」
答えた少女がマントの中から手を出して、金色に輝く腕輪を見せた。
「こいつじゃねえ!俺はリュートって名が・・・」
男の声が・・・確かに聞こえてくる。
金色の腕輪。
金色に輝く何かの装飾が施された腕輪から・・・声が聞こえてくる。
「お嬢ちゃん達、口喧嘩するくらい元気なら少し手伝ってはくれんかのぅ?
この麦藁を納屋迄運び込みたいんじゃがなぁ」
オレゾンとか云う街に間も無く辿り着こうとしていた。
少女は街に何の用があって向かっているのかは知らない。
あまり急ぎの旅ではなさそうなので、気のいいお爺さんは頼んでみたようだ。
「ああ、別にいいよ。
でも、手伝えるのは僕だけだからね。
こいつに手伝わせたら大変な事になっちまうから」
苦笑いを一つ。
男喋りの少女が腕輪を差し出して首を振る。
「おお、良いとも。
お嬢ちゃんだけでも助かるからなぁ・・・頼むよ?」
にこやかに答えたお爺さんの麦藁帽子に、影が映ったのはこの時だった。
「おい・・・なんか来やがったぞ?」
腕輪が呟く。
「ああ、現れやがったようだぜ?」
少女が空を見上げる。
二つの声に麦藁帽子を跳ね上げたお爺さんが空に浮かぶものを観て声を呑んだ。
「面倒くせぇなぁ・・・街も近いというのに」
腕輪が心底、嫌そうな声で嘯いた。
「でも、アイツは見逃してはくれないだろうさ」
少女が肩を窄めて応える。
麦藁帽子のお爺さんはワナワナと身体を震わせて見上げている。
帽子に影を墜とした者の正体を見上げて・・・
「お爺さん、危ないですからちょっと離れていた方が良いですよ?」
これは腕輪の声。
「僕が追い払ってみせるから。
あの岩場の蔭まで走り込んで?」
腕輪の声に被せ、少女が手ごろな避難場所を教える。
驚いたのはお爺さん。
まだ10歳にも届かないような娘っ子が、自分に逃げるように勧めて来たから。
「何を言っとるのじゃお前さん方は。
アレに立ち向かおうと言うのかね?無茶だぞぃ!」
泡を喰って慌てふためくお爺さんに。
「いやぁ・・・ちょうど腹が減ってしょうがなかったから。
アレを喰ったら少しは満たされるかなぁっと・・・」
金色の腕輪からの声が、とんでもない事を言いだす。
「リュートは必要ないから!
あんなの僕だけでやっつけられるから!」
麦藁から立ち上がった少女が嘯くのを。
「辞めておくんじゃ!あ奴等はお前さん達が敵う相手じゃないぞぃ!」
少女がどういう者なのか解らずに、お爺さんは止めたのだが。
荷車に立ち上がった少女が言った。
「お爺さんが居ると邪魔なんだよ!さっさと隠れないと巻き添えを喰らうぞ!」
苛ついたように叫んだ少女がマントを
少女の姿を観ていたお爺さんが驚愕の叫びをあげた。
「お前さんは!その魔法石は?!
お前さんは・・・?!」
絶句したお爺さんの代わりに腕輪が答える。
「ああ、<ミコ>は女神なんだ。
俺を
またの名を<ドラゴン・ライダー>って奴なんだぜ?!」
麦藁の上に立つ少女の姿・・・
金色の腕輪を着けた少女・・・
緑の瞳を開け放つ、あどけない容姿にそぐわない凛々しき口元。
茶髪を靡かせる少女が、腰に下げた剣の柄を握った・・・
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