記される言葉は、上質を追い続けた者の残照。壁の糧を、触れた相手に与える

タイトル通り、作者様がサラリーマンを辞められ、当時の記憶と現在を語るエッセイです。

私が、こちらの作品を拝読した時に浮かんだのは法面(のりめん)に施工された、
法面防護工の風景でした。
法面は、切土・盛土などの人工的に形成された斜面。
防護工の様式は多々ありますが、総じて土砂を崩さないための施工です。

坂を一度転がると、止まる事はない。

物理的にも、人生にも当てはまると、作品を通し語られます。
こちらに来てはいけないよ。貴重な体験談と共に、辛辣な現実を語って下さいます。
それがまるで、さきほどの斜面を塞き止める風景とリンクしたのです。

しかし、文面とは裏腹に、また、受け取り方によっては
転がる坂さえ間違えなければ、切磋琢磨に変わる。
加えて、
決断するためには、逃げ出すのではなく、身を守るための手段を用意し、覚悟が必要なのだと語られています。
ただ、感情を、経験を書き込んでいるだけのエッセイではないことを、私は強調して紹介させていただきたいのです。

桜雪様の作品は、エッセイばかりではなくファンタジー、現代ドラマ、童話と幅広く展開され、我々に多くの新鮮な驚きと教養を伝えて下さいます。

桜雪様、今回も素晴らしいエッセイをありがとうございます。
今度とも、追わせていただきます。