第3話 お見合い
「ちょっと待て。いきなりお見合いだと!俺にはまだ早いだろ!」と強い口調で否定した。
「まぁまぁ相手も同い歳だし、とても美人な子だぞ。おまけに家事もできる。完璧じゃないか。」と父が言う。
山本家は結構大きい家で、いわゆる名家だ。
父 雄三は大企業 シャインコンポレーションという総合企業の最高経営者だ。
母 凛は若い時から天才外科医として有名だったが結婚して外科医を辞めて整形外科を学び、雅博のケアをしている。
「浩三様、小泉様がいらっしゃいました。」と雄三の執事の久留間大造がやってきた。
「小泉?まさか...」と浩三を見ると
「そのまさかだ」
(やっぱりか...)小泉とは、シャインコンポレーションの副社長の小泉達弘の娘さんだと思ったがそのまさか。
「社長。今回はよろしくお願いします。」と部屋の外に聞こえた。
「香織。この方は社長の山本雄三さんだ。」
「はじめまして。小泉香織と申します。今日はよろしくお願いします。」
「今日はよろしくお願いします」と父が歳下に敬語を使った。
「雅博ーー入るぞ」と言い雄三が入ってきた。
「雅博さま、お久しぶりです」と達弘が入ってきた。
「お久しぶりですね、達弘さん」と返した。
「プロ入り決定おめでとうございます。」
「ありがとうございます」
「今回は私の自慢の娘を紹介します。香織、入ってきなさい。」と達弘が言った。
「失礼します」と言い入ってきたのは、ストレートの黒髪で身長は160cm近くで目鼻立ちが整っている、清楚な女性だった。
「はじめまして、旦那さま」と笑顔で言う彼女に、
「はぁーーーーーーー旦那さまぁーーーーーーーーー!?」
と発狂してしまった。
ちょっと待て、今日はお見合いということで来たのだろ!?それじゃ何故俺を旦那さまと呼んだ!?
「父さん!ちょっと来い!」と雄三に言った。
「はいぃ!」と父さんはビクッとしてついて来た。
「旦那さまとはどう言うことだ!?まさか許嫁とか言わねぇだろうな!?」
「すまんっ!!許嫁と言ったら雅博は絶対に会わんと言うと思ったから言い出せなかったんだ!この通りっ!!」と父が深々と頭を下げた。
「しょうがない。諦めるか...」
「良いのか!?」と尋ねる父に
「今さら断るわけにはいかんだろ。それに俺はプロ野球選手になるんだから印象を悪くするわけにはいかん。」
「あくまで、印象を悪くしないためなのか...」
父と話しが終わりまた部屋に戻った。
「失礼しました。父さんも頭下げろ!」と言い無理矢理頭を下げさした。
「社長!!頭をお上げください!」と達弘は慌てて言った。
「それでは、はじめましょうか」と俺が言い両家が座った。
普通なら何処かの料亭でするものだと思うんだが...
「雅博さま、娘はどうでしょう?気に入っていただけましたか?」と恐る恐る尋ねる達弘。
「会って数分も経っていないのでまだ何も分かりませんが、『娘はどうでしょう?』と言うのは少し気に食いません。娘さんを差し出すみたいな感じになっているので娘さんに失礼だと思いますよ」と言った。
俺は、差別されるのが大っ嫌いだ。人を物のように扱うなんて人間はどうかしている。だから俺は執事を雇ってない。
「失礼しました!」と謝罪した。
「娘さんと2人きりで話をさせてください。」
「分かりました」「分かった」と両家の父が部屋を出た。
ガチャっと扉が閉まった事を確認し話を始めた。
「はじめまして、山本雅博です。」
「こちらこそ、はじめまして。小泉香織です。プロ入りおめでとうございます!」
「ありがとうございます。1つ聞きますが僕たちは許嫁が決まっていたのですか?」
「私は中学に入った時に父から私には許婚がいると聞かされていました。私じゃご不満ですか?」と悲しげな表情で尋ねられた。
「そう言うわけじゃないですが、俺で良いんですか?野球しか脳がない馬鹿野郎ですが。それに想い人はいないのですか?好きな人がいる人と結婚はあまり乗り気じゃないですが...」
「とんでもありません!私はあなたの事が気になっていたのです。覚えてませんか?小学5年の頃に私達とあなた達の小学校が同じところで同じ日に林間学校があったことを...」
そういえば、小学生の頃の林間学校で自炊ができなくて困っていた子がいたのは覚えている。確かあそこの小学校は...
「池ノ水小学校...」
「覚えててくださったのですね。あの時私たちを助けていただきありがとうございます。」
「懐かしいなぁ。まさか、それで俺を知ったの?」
「いいえ。気がついてのはあなた様の写真を拝見した時です。忘れるはずのないお顔でした。何故ならあなたが私の初恋相手でしたから。だから、あなたの許婚になれて嬉しいのです。私はあなた以外の男性に興味を持ちません。だから、あなたの一生を私に託していただけませんか。絶対に幸せにします。あなたのサポートもしっかりします。アスリートフードマイスターだって持っています。だからお願いです。私をあなたの奥さんにしてください!」と懇願された。
俺の事をこう言ってくれる女の人は一生いないだろう。
おそらく彼女なら俺の生涯を安心して任せられるだろう。
彼女なら、愛せるだろう。
彼女なら俺を幸せにしてくれるだろう。
いや、俺が彼女を幸せにする。
「こんな僕で良いなら僕の奥さんになってください。」と俺は言った。
「はい!喜んで!」と強く抱きついてきた。
それに俺も抱きしめた。
「キスしませんか?」と香織さんから提案された。
「良いんですか?」と俺は聞く。しょうがないだろ、年齢=彼女いない歴だったのだから。もちろん、童貞だ。それに俺は、処女信仰だ。
「では」と言い彼女の柔らかな唇に俺の唇が重なり合った。
よく言われるが、数秒のキスでも長く感じる。
お互いに顔が蕩けている。
「キス。しちゃいましたね。」とチラッと唇を出す彼女に耐えられずちょっと強引にキスをした。今度は少しディープなのを。
父さんを呼んで、話し合ったことを伝える。
「父さん、香織さんを幸せにするよ」と言う。
すると、「「本当か!?」」と両家の父親が尋ね返した。
それと同時に、「達弘さん。いや、お義父さん娘さんをください」
「もちろんだ。君なら安心して香織を任せられる。香織をよろしく頼みます。」
「任せてください!」と言っている時も香織と手を繋いでいる。
「今日はお祝いだ。達弘くん奥さんを呼んできなさい。ここで、パーティーするぞ!雅博、母さんも呼んできなさい。今、確か昔の友達と一緒に買い物に行っているはずだ。」
「父さん。電話使えば速いだろ。」
「そうだな!」と父さんが言う。
この歳をしてボケが激しくなっているような気がするが、昔からこんな感じだ。
「香織、今日はここに泊まらせてもらいなさい。雅博さま。いや、雅博くんとも積もる話があるだろうしね。母さんに言って着替え持ってきてもらうから。」
「ありがとうお父さん。」と香織は言う。
お互いの父がそれぞれ電話と迎えに行く父親達がいなくなったところで香織は裾を引っ張る。
「旦那さま。私のことは香織と呼んでください。」との提案に
「そう言う香織も旦那様ではなく名前で呼んでくれ。」
「はい!雅博さん!」と満面の笑みで言ってくれた。
そして、恥ずかしいが提案することにした。
「今日、夜は俺の部屋で寝ないか?」命がけの提案だった。
下心丸出しとも取れる提案に引かれてないだろうか心配だった。その香織の返答は、
「はい!喜んで!」と言ってくれるのと共に、小声で、「私を抱いてください」と上目遣いで言ってきた。
男というのは女性の上目遣いには弱い。
「お手柔らかに」と俺は返す。
すると、「私はまだ処女ですよ」とまさかの告白。
香織も恥ずかしいと思うが、必死に伝えたいことを伝えたのが分かった。
今日は長い夜になりそうだ。
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