第2話 二月の雨

調子がよくならないのはわかっていた。いや、期待していなかった。期待してないふりをして実は期待していた。後輩の結婚式に呼ばれた。是非来て欲しい(よほど人数が足らなかったのだろう。こんな私を呼ぶなんて)と言われたので行ったが、己の調子の悪さを露呈しただけであった。ろくすっぽ歩けやしない。あのキラキラのスーツやドレスでおめかしした連中を見ると足がすくむのだ。早く終わって欲しいということしか考えていなかった。大学時代の同期の仲間たちは出世していた。ニートの俺にも話しかけてくれる良いやつらだが、やはり変わってしまっていた。あの社交性は俺にはない。もちろん彼らが持っている地位も金も、そこから来る自信もだ。

彼らから蔑まれたわけではない。しかし私はもう結婚式にはいかないであろう。彼らとも逢おうとすることはないだろう。二月の雨は決して激しくはないが冷たい。冷たくて曇り空。たばこの煙はどこへともなく灰色の空に重なりながら空の上へ消えていった。私の調子はいまだよくはならない。

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