第33話 生きている意味

生きている意味はないという説がある。

確かに納得できる部分は多々ある。

いつか老さらばえて死ぬのなら、今生きているのに何の意味があるのだろうか。

一つあるとすれば種の保存。

生殖はあらゆる生物の根源的な欲求。

あと、あるとすれば・・・


生きることを楽しむということだ。

地球の一生からすれば一ミリにも満たないこの人間の一生を

最大限楽しむことこそ、生きている意味があるという感じがする。


では、生きることを最大限楽しむということはどうすることか。

世界一周旅行をするか。

愛する人と付き合うか。

でかい家に住んで高級車を乗り回すか。


いかなる場合にも金がいる。

愛は金では買えないという説もあるが、買えるという説もある。

強いていえば、ある程度金がないと、愛は買えない。


では、愛も金もない私はどうやって人生の意味を見出したら良いのだろうか。

私が尊敬する文学者の安部公房氏の小説で、生物を捕食することを辞め、体内の必要な組織を自己生産するよう進化(退化?)した生物が登場する。

争いもなく、非常に幸福な文明として栄えているという描写があった。

現代社会の、働いて利益を得て、その利益で己の幸福感を満たすといった方法とは全く逆の発想ではないか。

いくらでかい家があって、高級車があって、愛する妻がいたとしても、「幸福度」がなければ意味がないのだ。

この「幸福度」を、競争により、他人を傷つけたりすることなく得ることができるようものなら、なんと合理的な方法ではなかろうか。


私はもう外界から「幸福度」を求めることはもうやめた。

私は山に行く。

自活する。

己自身で「幸福度」を生成するのだ。


どうか探さないでください。

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