第11公 オネェは傾く

 IKKOに異変が起きたのだ。


 オネェたる者は、顔を少々斜めに傾けて男性を誘惑するイメージが確かにある。上目遣いでジーっと見つめて来るのだ。


 だが、驚くことにIKKOがその技術を身に付けたのだ。


 可愛い後脚で立ち上がると、IKKOの頭が斜めになってしまうのだ。ついに本格的なオネェになってしまったのか…!


 顔の重いマツコですら斜めにならず、真っ直ぐなのに。


『ケンカ売ってるのかお前ッ! 私は頭を傾げようにも首が無いから無理なんだよッ!』


『ど、どんだけ…』


 心無しか、IKKOが辛そうに見える。


 ってことで、俺は嫁を引き連れて以前も訪れた動物病院へと行ってみたのだ。


「ほっほっほっ。これは、『斜頸しゃけい』と言う病気ですの。IKKOくんには薬を処方しときましょう。」


 この先生はかつて、マツコが男であることを我々夫婦に教えてくれた名医だ。


「先生! IKKOは助かるんですか!?」


 嫁は、目をうるうるさせながら先生に食い付く。


「オカマは生命力が強いのです。必ずIKKOくんは元気になりますぞ。ほっほっほっ。」


「そ、それは…まことでありますか、先生!?」


「オカマを舐めてはいけませんぞ。ほっほっほ。」


「IKKO! 一緒に頑張ろうね! お薬飲もうね!」


 おい、この先生は何故、俺らのIKKOがオカマだと知っているんだ…!?


 そして何故、嫁は先生の台詞に対して違和感を感じない…!?


 因みにだが、IKKOはそれから間もなく真っ直ぐ立てるように復活した。オネェらしい仕草は無くなってしまったが、健康が一番大事だ。


 これからもモフモフで癒してくれよ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る