第2公 男の子かな?女の子かな?

 モフモフが家にやって来た。俺らの目に留まってしまったばかりに。


「ほら、ここが君のお家だよー!」


 俺が組み立てたケージの中に、遂にモフモフを解き放つ時がやって来た。ここまで随分手間を取らせやがって。お詫びとして、存分に癒しを与えてくれ。嫁の春香はるかが、小さな箱に入ったモフモフを手の平に優しく移すと、ケージの中にモフッと自由にさせてやった。


 モフモフは、初めての場所で戸惑っているのか、姿勢を低めにしてチョロチョロ動き回り始めた。


『あー、ここに餌があるぞ。ここに水があるぞ。ここは住処にするといいかもしれない。』


きっと、そんなことを考えているに違いない。俺は、妄想だけでニヤニヤが止まらなかった。


「そう言えば、このモフ子は、男の子なの? 女の子なの?」


 嫁が不意に疑問をぶつけて来た。そう言えばどっちだろ? 何も気にせず迎えてしまった。だが、モフモフよ、オスだろうがメスだろうが、お前はモフモフには変わりないのだから安心せい。


「そうだな。名前を決めないといけないし、ちょっと失礼しよう!」


 俺は、ケージの中を探索中のモフモフを脅かさないように、そっと掬い上げると、オスかメスを確かめるべく、申し訳ないが失礼した。


「いやん!」


 何か、横で嫁が顔を紅らめている。お前も可愛い奴だなこの野郎。だが、今は嫁に構っている暇は無い。この俺の手の中で、恥ずかしい格好を晒しているモフモフの性別を判断しなければならないのだ。許せ、モフモフよ。ん、無いぞ? いや、これか? んー、分かんないな。


「無いぞ…多分!」


 俺の目には何も映らなかった。じゃあ、メスか。それならば大変失礼なことをしてしまった。俺は、モフモフに最大級の敬意を表し、ケージの中に戻ってやった。


 その後、調べて分かったのだが、生まれて間もないハムスターの性別は見分けにくいそうだ。


 困ったぞ、どんな名前を付けてやればいい?

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