第9公 いんふるえんざ

「うー、キツイよ〜。」


 嫁が、インフルエンザになってしまった。食欲も無く、熱が高い。せめて水分は摂ってほしいものだが…。


「何か食べたい物とか…ない?買ってくるよ?」


「へ…?食べたい…物?う〜ん…じゃあ…マツコと…IKKO…!」


 ヤバイぞ。熱が高すぎておかしくなったのかもしれない。モフモフ達がこのままだと食べられてしまう!


 確かに最近、肉付きが二人とも益々良くなり、何かが起こった際には非常食になりそうだと考えたことはある。


 しかし、今食べられるのはマズイぞ!あくまでも非常食なのだ。


『あらやだ、私食べられちゃうのね、アンタみたいな女に…!』


『どんだけ〜』


 モフモフ達の悲痛な叫びが聞こえてくる。


「おい、春香!アイツらは確かに肉もあるし、ぼた餅みたいだけど、流石に食べたらいかんぞっ!冷静になるんだ!」


「へ?じゃあ…抱っこする…連れて来て…」


 …と言うわけで、お二人さんを、嫁が寝ているお布団の所まで連れて来た。まず、IKKOを嫁の手の上に乗せ、何を血迷ったのか、俺はマツコを嫁のおでこの上に置いた。


「あれ…?マツコ、草の匂いがする〜、美味しそ〜!」


「だから食べようとしたらダメだって…!少なくとも女性には食べられたくないだろ!」


 俺は、マツコの想いを最大限に尊重する。


「あー、マツコもIKKOも温かいよ〜。モフモフしてる。寒気が吹き飛ぶよ〜。」


 モフモフなオネェ様方は、思いの外、嫁の体の上で大人しくしていらっしゃる。時折、毛繕いをしたりと、奴らは満更でもなさそうだ。しばらくの間、嫁は、モフモフをしっかり堪能したのであった。


 ちなみに、その晩、モフモフ効果があったのか、嫁の熱が一気に下がり、俺にインフルエンザの症状が現れた。

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