第10公 ばれんたいん

「ダメよ!今日は何の日か当てないとマツコ達には指一本触れさせない!」


 困ったぞ。俺の癒しである、マツコとIKKOが人質として嫁に取られてしまった。


 いや、人質ではない、ハム質と言うべきか。


 マツコらは、ハム質にされたにも関わらず、嫁の背後のゲージの中で各々違ったライフスタイルを送っている。


 マツコは今、回し車でダイエットをされているようだ。


 恐ろしいことに、マツコは体型が完全にデラックス化してしまった為、回し車から若干ではあるが、体が斜めにはみ出してしまっている。真っ直ぐ走ると体を収めることができないようだ。


『ちょっと何これ、私には小さ過ぎるわ。だけど我慢して乗ってやるよ!どうせアンタらには関係ないんだからっ!』


 IKKOは、自分の寝床を製作中だ。


 何故か、ゲージの中にある『おうち』ではなく、IKKOはトイレの中を寝床として選んだ。寒い冬をぬくぬくと越してもらう為に、ワタをたくさんプレゼントしたのだが…。


 それをトイレに全て運んだIKKO。お前もオネェの端くれなら清潔感ぐらい持て。


『トイレで寝てもいいじゃない!どんだけ〜!』


 いや、待て…!呑気にモフモフオネェ達を観察している暇はない。「今日は何の日か?」俺は、嫁に悟られないように壁に掛けてあるカレンダーを見た。


 はっ…!


 2月14日…!


 バレンタインではないか!


 なるほど、嫁の奴め。俺にチョコレートを買って来てくれてるんだな。


「き…今日はバレンタインだ…!」


 嫁は、俺が気づいたことで、ハッとした表情へと変わった。


「正解!実はね、コレ…。」


 嫁が背後に隠してあった可愛らしいデザインの箱を取り出した。俺は、大袈裟なリアクションの準備をする。


 しかし…!


「ハムスター用のバレンタインのおやつが売っていたの!マツコとIKKOに食べてもらおう!」


 え、俺のじゃないの…?

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