薄明

作者 仙崎愁

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★★★ Excellent!!!

 カメラを趣味にしていた祐は、家族とのいさかいやこじれた人間関係のために、それを捨てた。大学生になってからは自堕落な日々を送っている。そんな折、病院で祐は美しい女性・渚月と出会う。ピアノをかつて愛し、今は絵を描き続けている彼女に祐は深い感銘を受ける。渚月への明確にできない感情を抱えつつも、祐は自堕落な己を変えたいともがき始める。

 人間の光と闇をとことん描く文体が、まさしく人間ドラマだと感じました。祐は自他共に堕落していると言われていますが、渚月との出会いをきっかけに変わろうとしていく。祐だけではなく、周りの人間も当たり前ですがそれぞれの人間関係を抱えていて、そこから何かに向かって足掻いています。人間というもののあり方を考えよう、変えようとすると、生死というものも無関係ではいられません。祐をとりまく環境は複雑で困難でもありますが、彼が人との出会いを通じて何を得て、どんな答えに辿り着くのか。それを見届けたい、と願わずにはいられない小説です。

★★★ Excellent!!!

悲しいのに生き生きと眩しい、苦しいのに美しい、儚いのに力強い。そんな作品です。

人物の描き方がリアルで、読みながら自分自身とどこか重ね合わせてしまう。堕落した主人公が、前を向いていく姿に、圧巻されました。

人物の話す言葉のひとつひとつ、それから、緻密に描写される風景の美しさに、芸を感じます。また、時計や香水など、物語の中で吹く風によって形を変える表現にも注目です。

ネット小説で、こんなにも哲学的な芸術作品にはなかなか出会えないと思います。
一読すべき作品。

★★★ Excellent!!!

 これは、闇において足掻き光を見出していく、等身大の愛と死を描いたヘビーノベルだ。

 この小説『薄明』は、愛と死を容赦なく突きつける。
 愛とは甘いだけなく、人を傷つけ、慟哭させ、壊すこともあると感じさせられる、と。
 死とは苦しいばかりではなく、生者を前へ進めていく力もあると感じさせられる、と。
 
 それが出来るのは、『薄明』がひどく現実的(ヘビー)だからだ。
 体よく物語は進まない。御都合主義など以ての外。
 空想や妄想だとして片付けられない重苦しさを、棘を、心に突きつけてくる。

 しかし、これだけ等身大に愛と死を描くからこそ、掴み得る光もまた輝かしい。譬えその光が十全な幸せの形をしていなくても。
 そしてこの輝きは、間違いなく『薄明』でしか描けないものだ。

 触れれば傷つく。
 しかし、触れずにはいられない。
 重く痛く、死を匂わせ、それでもそれは――惹かれる程に美しい。
 これは、枯れた白薔薇のような物語。

 ――花言葉はどうか、貴方がこの物語を全て読み終えた後に。

★★★ Excellent!!!

繊細で、脆い堕落の中にいた主人公。
ひとつの出会いが彼に、ひとりの愛する人に、周りの人々に色を与えていきます。

情景描写、心情描写が美しく、深みのある文章です。
作品に登場する絵画、小説、音楽等がその美しさを際立たせているような気もします。

幸福の余韻を感じさせてくれる作品です。

★★★ Excellent!!!

純粋で繊細で精巧な物ほど、
それが壊れる瞬間は
キラキラと夜空に瞬く星のように美しい。

堕落と後悔に沈み、世界が色あせて見える。
誰しも一度は陥った事があるでしょう。
この作品はその傷痕を、あるいは生傷を、丁寧にかつ深部までえぐり出す作品です。

そこからあふれ出すのは、真っ赤な血ではなく、ドス黒く濁った血です。腐臭に塗れ、粘ついた血です。

しかし、泥の中にも咲く花はあります。
泥の中でこそ輝く花があります。

あなた傷を抉りましょう。
これはヘヴィノベルです、生半な覚悟では手を出さない方が懸命です。

★★★ Excellent!!!

丁寧な心理描写と情景描写に加えて、物語全体の構成が素晴らしい作品です。
堕落と再生のキャッチコピーにふさわしい物語で、色んな人の生き様が描かれています。

まさに純文学な作風で、学生時代に同じような雰囲気の作品を好きで読んでいた私にはとても好みでした。

ひとつの出逢いを経て、堕落していく主人公はどのような道を辿っていくのか。
ぜひ、最後まで見届けて欲しいです。
読み終わった時、私は空を見上げたくなりました。
前を向いて今日も頑張ろう、と気合を入れたくなりました。

そんな素敵な物語です。

★★★ Excellent!!!

作者様のタイトルとは意味合いが違うかもしれませんが、最後まで読んだ印象としてはこのキャッチコピーが頭に浮かびました。

人生、どこかで堕落してしまった人は多いと思います。自分もそうです。現在進行系です。なので、この主人公を見ていると、まるで鏡写しの自分を見ているようで胸が苦しくなりました。

最初の方はつらいかもしれません。でも、それでも先を読んでみてください。堕落した彼があがき、苦しみ、そして最後はどこに辿り着いたのか。最後にはきっと静かな感動が待っているはずです。
そして登場人物一人一人にまたドラマがあります。彼らがどういう経験を経てどう変化していったのか。それもまた、この作品の見所のひとつなのではないかと思います。

★★★ Excellent!!!

なぜか明るい病室に、白い透明なカーテンが、ふわふわと風に揺れているシーンが思い付きました。

恋愛というよりは、純文学に近いでしょうか。
しかも、かなり上質の。
その中に、ほんのりと恋愛色がサッと引いてあるイメージです。
作者様は性的描写はないと仰っていましたが、それでも色香が薫るのは、作者様の腕が良いからでしょうか。

一度は読んで頂きたい作品です。

★★★ Excellent!!!


 ただただ、この物語は愛を語る。
 キリストのような崇高な慈愛でも、釈迦のような崇高な愛でもない。

 人が人を想うからこその愛。

 それは、ときに醜く、自分勝手で、自らを破滅に追いやることもあるだろう。
 けれど、いつかは想う人のもとへ戻ってくる。

 この物語は、自堕落な自分を許せず、泥沼の愛の中に陥った主人公が、一人の少女と出会うことによって新たな愛を見つけていく物語だ。
 その愛が、再び自らを破滅させてしまうものになるのか、それとも美しい、ただ相手を思いやるものになるのか、はたまた全く別のものになるのか、それはまだ分からない。

 是非、あなたにもこの物語を読んでもらって、その結末を見届けてもらいたい。
 「愛されたい」という思いの結末を。

★★★ Excellent!!!

繊細な感性と鋭い洞察力によって織り紡がれた、人の生き様を描く作品です。
主人公は善性が強く純真で、それがゆえに脆さを抱えた大学生。自己嫌悪と隣合わせな堕落した日々の中、祖父が入院している病院で出逢った女性が、彼に変化をもたらしていきます。

絡まりもつれた人間模様、うまくいかない人間関係、上辺だけでやり繰りしていた危うい日々は、ひとつの「死」によって崩壊してしまう。
どん底まで落ちたからこその、再起のはじまり。
運命の糸を辿って伝播するかのように、その日々は彼を取り巻く人々をもそれぞれの囚われから解放してゆく、切っ掛けになっていきます。
過程は平坦ではありませんが、ひとつひとつ丁寧に重ねられてゆく物語は、まるで映画のようにそれらの日々を感じさせてくれるでしょう。

叙情的で描写力に優れた語りの中に差し込まれた、絵画、音楽、小説、哲学なども、物語に奥行きと深みを増し加えています。
各所に散りばめられた「美しいもの」は、読み終えた後にきっと心に深い余韻を与えてくれるに違いありません。
派手さはなく、薄明、夕焼け、月光、などのように淡くゆるく心を満たす物語。
ぜひこの機会に、堪能してみてください。

★★★ Excellent!!!

セピア色を孕んだ空気
満たされない想い
壊したくないから言えない想い

誰もが1度は思うことを、狭い空間(キャンパス)に描き出した、油絵? いや、水彩画のような物語

描写や比喩が綺麗で、ドロドロした関係さえも1部のようで
主人公の動向ひとつひとつが、表情が見えるようでした

人と景色を同時に感じられる作品です