幻想であれ。幻想であれ。全て幻想であれ。

 もし自分が物語の中にいたら、そうとしか言い様がないだろう、と思わされる物語です。

 文章のよいところは、自分の好きなキャスティング、好きなロケーション、好きなBGMを頭の中に浮かべられる事だと思っている私は、序盤から中盤にかけ、不思議とBGMが浮かびませんでした。

 不思議な読書感、決して不快ではない感覚のまま読み進め、終盤にさしかかる瞬間のショックときたら、言い表そうとするのももどかしい、鮮烈なものでした。

 これこそが私が文字に求めていたエンターテインメントです。

 スクロールさせるのも面倒になるくらい、読む方にだけ自分の五感を使いたいと思ってしまう怒濤の展開です。

 現実と幻想が曖昧だった前半に比べ、これでもかと現実が迫り、容赦なく読者を駆り立てるでしょう。

 少なくとも私は、震えるほど引き込まれました。たかだか5インチ程度のスマートフォンの画面が巨大に見えるほどに。60インチ4K? 映画館? VR? いやいや、そんなものではありません。

 …何だ、私もアリスになってしまっただけですか…。

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