第11夜 なみさと流作品タイトルのつけ方
一度でも物語を創作したならば、悩んだことはあるはず。
そう、書き上げた作品につけるタイトルを何とするか、で。
「タイトルとは物語の内容やテーマをわかりやすくギュッと濃縮したモノ」
そんなような意味の文を目にしたのは今年に入って。
もっと早く知っておけば良かった、なんて後悔はしない。
なぜならタイトルのつけ方なんて適当で自由で遊び心があって良いとはるか昔に悟ったがゆえに。
今回は、タイトルについて目から鱗が落ちた経験を説明したい。
筆者が若い時はレンタルビデオ全盛で黄金時代だった。
まだ大手のビデオショップはなく、ほとんどが商店街の個人経営店。
徐々に中規模のチェーン店がぼちぼち駅前に出てきたような状況。
最新の映画に古い映画。
A級のエンタメ作品にカルトなB級映画。
これらが所狭しと並んでいる様子は混沌としていて玉石混交。
少ない小遣いの中でレンタルするのだからハズレは借りたくない。
そこで愛読していたのが『ビデオでーた』という雑誌。
どの作品がいつ店頭に並ぶのかはもちろん、あらすじ、主要キャスト、上映時間まで網羅している優れもの。
しかし優れているのはそれだけではない。
その雑誌には少し攻めたコーナーがあった。
ちょっとふざけたタイトルの映画を扱っている会社に、『なぜあなたの会社ではそんなふざけた邦題をつけたのですか?』と説明を求めるコーナー。
以下に思い出しながら書いてみたい。
・なぜ『タコス・アミーゴ』というタイトルをつけたのですか?
――メキシコとアメリカの合作なので、日本人でも知っているメキシコのワードをとりあえず並べてみました。
・なぜ『毒ガス学園スカンクス』というタイトルを?
――アメリカのキャンパスを舞台にしたコメディで、オナラのギャグ多めなのでインパクトあるタイトルにしてみました。
他にも色々あったが一事が万事この調子。
ちゃんと会議で大真面目に決めたところを想像すると少しおかしい。
だが、その甲斐あってこれらのタイトルは今でも筆者の記憶に残っている。
作品は未だ鑑賞していないがタイトルだけは覚えている。
今、思い出したのはランボーのバッタ物の後追い作品にランボー者(マーロン・ブランドの乱暴者ともかけている)と名付けたのがあった。
その節操の無さには拍手を送りたい。
作品名だけではなく役者もまたそう。
ブルース・リーが世に出たらブルース・リやブルース・リィもまた世に出る。
エノケンが人気絶頂になればエノケソも出てくる。
麻原彰晃が世間を騒がせたらAV界に麻魔羅少将が。
アントニオ猪木のモノマネ芸人にはアントキの猪木が。
勘違いしないで欲しい。
決して非難しているわけではない。
人気作や人気俳優はきらびやか。
それにあやかろうという気持ちは自然だし、必死な様はおかしくもどこか悲しい。
そんなわけでタイトルや芸名は自由で適当でいいのでは、と思った。
もちろん筆者の作品タイトルも人気作に便乗したものが非常に多い。
『祓ってポン!』は昔のバラエティ番組『笑ってポン!』から。
『お父さんは一所懸命』は海外ミステリー小説『のら犬は一生懸命』から。
『ちょいと武張って』はキャパの『ちょっとピンぼけ』から。
『大きい魔女と小さな5年生』は児童文学の名作『大きい1年生と小さな2年生』から。
『ドキドキドン! 中学一年生』はポンキッキの歌『ドキドキドン! 一年生』から。
『燃えよヤイト拳 ~地獄の小学生~』にいたってはもはや説明不要。
こうして改めてまとめてみると、我ながらちょっと引く。
それに小説を書いている以上は文学っぽくて格調高いシンプルで短いタイトルに憧れたりもする。
『細雪』、『一夢庵風流記』、『老人と海』、『オーパ!』、『さぶ』、『北の海』などなど。
さて、次作のタイトルを上記のような感じにするか。
はたまた『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』のようなインパクト重視にするか。
実はあれこれ迷っている時が一番楽しかったりする。
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