第10夜 面接官に「座右の書は?」と聞かれたら
もしくは、「最近読んだ本の中で感銘を受けた作品は?」と聞かれたら。
何と答えるか。
筆者が中学生だった時、この手の想定問答集が配られた。
そこでの模範解答は『ビルマの竪琴』だった。
映画化されて有名な作品ではあったがなぜか読む気はしなかった。
それならば面接用にどうだ、と親友が本を貸してくれた。
『しろばんば』、『夏草冬濤』、『北の海』。
井上靖の自伝三部作。
文学はつまらないものという先入観が見事に覆された。
何回も読み返し、その度に受験勉強のいい気晴らしになった。
だが、私立高校の面接ではとうとう本についての質問はされなかった。
いずれにせよ本が好きな人にとっては自己アピールする絶好のチャンス。
読者の皆様にとってもこんな場面の一度や二度は経験したことがあるはず。
受験の面接で、就職試験の面接で。
もちろん筆者にも経験がある。
そこでの失敗を経たからこそ学び考え、次に生かしたい。
先ずはバカ正直にお気に入りの本を口に出してはいけない。
これは罠なので無難なタイトルを挙げるに限る。
従ってタイトルが危なそうな作品はどんなに内容が素晴らしくてもアウト。
『麻薬常用者の日記』や『ドグラ・マグラ』などは避けたほうが賢明。
次にハウツー本も避けるべし。
『10万円から始めるFX超入門』や『こんなにヤセていいかしら』もダウト。
マンガやラノベは言うまでもない。
ただし『はだしのゲン』は例外とする。
ミステリーや冒険小説など娯楽色が強すぎるのも難がある。
『深夜プラス1』、『血の収穫』、『地下鉄サム』、『フロスト警部シリーズ』は面白いけど面接官に言うべき作品ではない。
まだ筆者が若い時、運良く警視庁採用試験の二次試験まで残ることができた。
問題だったのは面接試験。
これから取り調べのプロに面接をされるのだと思うとガチガチに緊張してしまった。
「趣味は読書とありますが好きな作家は誰ですか?」
面接官は穏やかに質問をした。
「はい、最近では山本周五郎です」
近所にある図書館の山本周五郎作品はほぼ読破するほど当時はハマっていた。
「では山本周五郎のどんな所が好きですか?」
再び穏やかに面接官は質問をした。
どんなところだって?
武士の誇りや意地。
名もなき庶民の高潔さ。
今ならそう答えられる。
読めばわかる。
しかし、筆者はパニックになってしまった。
「あ、その、硬派な感じでしょうか」
ひどい答えだと今でも思う。
筆者はこの二次試験は落ちたと確信した。
しかし後に二次試験合格の知らせが届いて大いに驚いた。
そして最終試験で落とされたのだがそれはまた別の話。
結論としては上記の条件に当たらない本をオススメしたい。
そして内容や好きなポイントをキチンと把握し、なおかつ口頭で説明できるよう整理しておくとスラスラと答えられる。
何となくカクヨムのレビューを積極的に行えばこれらのスキルは鍛えられそうな気もする。
と同時に本から受けた感動を自分の中だけに留めておきたい気もする。
説明したらそれはそれそのものを正確に表したものではなく、どこかにズレが生じる。
それでも感動を分かち合いたい、という気持ちも嘘ではない。
なので筆者からのカクヨムにおけるレビューがイマイチなのはご容赦願いたい。
「どんな本に感銘を受けたか?」
この質問の意図は明確だ。
TPOに適した相応しい答ができるかどうかを見極めている。
個性を出そうとしてはいけない。
間違えても面白いからと言って『やさぐれ必殺拳』などと口に出してはいけない。
筆者からのアドバイス、役立ててくれれば幸いである。
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