第8夜 置いてあるマンガや雑誌のセンスで、その店の品格が決まる説

 サービスを受けるのに長時間待たされて当たり前という場所が存在する。

 例えば歯医者、病院、床屋、銀行、携帯ショップなどなど。

 もちろん待つのは覚悟の上なので、そんなにはイライラしない。

 それに、どちらかと言うと穏やかでのんびりした性格だと自他ともに認めている。


 ただし、備え付けの雑誌に女性週刊誌が置いてある場合は別。

 それを見つけた時に、般若のような表情になっていくのが自分でもわかる。


 なぜか?

 それは、

「お前たちのような底辺は好きなんだろう? 芸能人がくっついたの離れただのとか、スキャンダルや、悪口が。下品でゲスなニュースが。だからお前らにピッタリの雑誌を用意しておいたからありがたく思えよ」

 と店側から言われているのに等しいと感じるからに他ならない。


 筆者は決してクレーマーでもないし、被害妄想甚だしくもない。

 ただ、置く雑誌には気を使って欲しいだけなのだ。

 女性週刊誌を置くぐらいなら、まだマニアックな雑誌の方が救いようがある。


 修行時代に筆者が勤めていた接骨院の院長の趣味は山登りだった。

 若い時はラグビーの選手だった。

 だから待合室においてある雑誌は院長権限で”山と渓谷”と”ラグビーマガジン”だった。

 公私混同かもしれないが、この雑誌のチョイスは単に院長の趣味全開なだけで、患者が読んで不快にはならない。


 なので筆者が治療院を開業した時も、待合室に置く雑誌には気を使った。

 結果、選んだのは”Tarzan”と”ナショナル・ジオグラフィック”の二誌。

 本当はもっと多くの雑誌を購読したかったのだが予算の関係でどうしようもなかった。

 限られた予算の中からこれらの雑誌を選んだのは我ながらよい選択だと今でも思っている。


 そしてそれは次の妄想につながる。

 次に治療院を開いた時に置くべき雑誌とマンガを決めなくては、という妄想に。


 雑誌に関してはある程度決まっているので以下に思いつくまま挙げたい。

 ”おとなの週末”

 ”サライ”

 ”DIME”

 ”週刊プロレス”

 ”散歩の達人”

 ”歴史人”

 ”ダ・ヴィンチ”

 まだまだあるが、この辺で。


 いかがだろうか?

 置かれる雑誌の種類でなんとなく治療院の雰囲気というか品格を感じ取ってもらえただろうか?


 そしてマンガであるがこれは少し難しい。

 面白いのはもちろんだが、過剰な暴力描写や性描写のあるマンガは避けたい。

 なので”レイプマン”などはとんでもない。

 それでいて床屋によく置いてあるマンガとはかぶりたくない。


 これらの条件に合うマンガを以下に挙げてみる。

 先ずは作家買い。

 ・藤子不二雄

 ・梶原一騎

 ・ちばてつや

 ・ちばあきお

 ・松本大洋

 ・鳥山明

 ・井上雄彦

 以上、敬称略。

 これはこの作家のマンガならどんな作品でも間違いない、というのを挙げてみた。


 次にあまりメジャーじゃなく、だけどオススメしたいマンガを個別に挙げてみる。

 ・COPPERS

 ・うっちゃれ五所瓦

 ・国民クイズ

 ・オフィス北極星

 ・めしばな刑事タチバナ

 ・包丁無宿

 ・花マル伝

 ・あっかんべェ一休

 ・栄光なき天才たち

 

 キリがないのでこのへんで。

 どれもグロや性描写はほとんど無いので安心して読める。


 もしチャンスに恵まれて治療院を再び立ち上げる時は、待合室にこれらの雑誌とマンガを置いておく予定。


 患者も読んだことのない、それでいて面白いマンガに触れたいはず。

 これだけでもライバルに差をつけられるので、間違っても経営破綻なんてしないだろう。


『面白い雑誌とマンガが置いてある波里鍼灸接骨院。

 親切丁寧に患者様のお話を聞き、誠心誠意の治療をいたします。

 皆様の来院をお待ちしています』


 調子に乗ってうっかり宣伝文句まで考えてしまった。

 これから、お気に入りのマンガを読んで少し頭をクールダウンさせなければ。

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