悩んで、苦しんで、辛くって。だけどそれ以上に、未来は希望に満ちている。

本人にとっては、ただ寝て起きただけ。
しかし同級生は自分よりはるかに年上になり、行きつけだったお店はなくなり、流行は移り変わり、さらには家族までもが変わってしまっていた。
作中にもありますが、それはさながら竜宮城へ行ってしまった浦島太郎のような心境なのでしょう。
そんな主人公・棘の心を想えば、年齢など関係なしに、不安定な精神状態に陥ってしまっても無理もないかもしれません。
手元に玉手箱があったなら、中身がどんなものかを知っていながら、開けてしまうかもしれません。

けれど、長い眠りについたからこそ、結ばれた縁もある。
現実にコールドスリープの実用化が成された暁にも、このような作品の存在が当事者たちに勇気を与え、未来へ希望を抱く助けとなるに違いない。私はそう信じて止みません。
希望はあるのです。生ある限り。

眠る側と、待つ側。双方を経験した棘が、どのような形で彼との再会を果たすのか。
彼女らの希望に満ち溢れた未来へと、今はただ胸を踊らせるばかりです。

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