ボタンのかけ違いから、二人の気持ちはすれがい、あわや物語は途絶えようとしていた。 心も物語も、信じる気持ちから生まれる。けれどもう一押しが難しいのだ。配達人はそれを教えてくれる。
文明が退廃した世界にて、手紙を届けに道無き道を進む少年、カタリ。やがて彼は目的の地、巨大な塔へとたどり着く。そこで出会ったのは、人嫌いな男性と、AIの少女でした。不器用な二人を救うため、カタリは動き出します。その一連の流れというものがなんともスマートで、彼の魅力を存分に引き出している作品であるように感じました。書けども届かなかったラブレター。機械では綴れなかった物語。その果てに二人が紡いだ結末、どうか味わってみてください。
設定をうまく生かして起承転結も完璧。キャラも世界観に溶け込んでいるし、王道中の王道ですね。カタリの決め台詞、バーグさんの短いスカート弄りも完璧。 変化に逃げたり引いたりする作者も多く居る中、難しいお題に立ち向かって受け止めるガップリ四つの組相撲。まさにKAC千秋楽の最期の大一番です。良い物語を読ませていただきました。 いや~、カクヨムって本当に素晴らしいですね。
塔。儀式、見張り、そして砦。いずれにせよ、なにか大切なものを守り見張り実行する建物だ。 塔にたてこもっていた男には二つの財産しかなかった。自分の命と自分の物語だ。前者は皮肉にも本人の望みを阻み、後者は辛辣にも本人の望みを遠ざけた。 そんな袋小路を主人公は突き破った。『詠目(ヨメ)』の前にはあの二人を隔てる壁などないに等しかった。 今こそ命が物語に触れる時だ!
やられた、こんなにあのわけのわからないKAC10のお題を生かし切った物語もないであろう。しっかりと設定を使い切って、そして感動までもたらす。4000文字しかないストーリーなのに物足りなさはなく、世界観とキャラクターが完全にマッチしてる秀作。あーぁ、レビューを書いてはいるけど、人目に触れてほしくない。でもこれに負けるなら仕方ないかもしれない。