青春の《青》はどんな青なのか

《青春》……それは誰もが経験する人生の過渡期である。
きもちが多様に移ろい、道の岐路にたたずんでは物思いに耽り、答えのないことに懊悩し、時に喜びに溢れて、時に憂い、そうしてこどもという殻を破り大人になっていくのです。若く力に溢れた季節でありながら、もっとも不均衡な時でもあります。

この季節を果たして、どのような《青》で表せばいいのでしょうか。
勢いを増す夏の樹木の葉の《蒼-あお-》か。雲ひとつない晴天の《藍-あお-》か。どこまでも舵を取り渡っていける大海原の《碧-あお-》か。それとも痛くない振りをして隠した青あざか。熟れることなく落ちてしまった果実の色か。

彼の、青春はどんな《青》だったのでしょうか。優しくなりたかった彼の季節は。
彼の、青春はどんな《青》だったのでしょうか。優しくもない友達に寄り添い、時に傷つき、時に愛した彼の季節は。

これはふたりの青年の、ささやかな、けれどかけがえのない青春の一頁です。
青春の海を漂うふたりの懊悩が、読んでいて微かな胸の痛みさえともなうほどにありありと書かれています。その場の空気まで伝わってくる文章はほんとうに素晴らしいです。繊細な筆で綴られるふたりの関係はどこかいびつで、とても優しい……。

青春の影や心の襞にすっと浸みるような物語に惹かれる読者様には、是非とも読んでいただきたい小説です。
そうして読み終えた時にこの余韻を抱き締めて、一度だけ、考えていただきたいのです。
あなたの青春はどんな《青》をしていますか? どんな《青》をしていましたか?

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