青春なんちゃら切符の旅
ピューレラ
第1話 魔法部
【家に帰ったら羊羹があったらいいな】ではなく【部室以外でもヅカ先輩を見れたらいいな】が俺の願いだ。
だいたい【家に羊羹があったらいいな】って何だよ。俺、羊羹なんて好きじゃねぇし。
俺の所属する魔法部では一番最初に、うちの部で言うところの魔法を説明するのに、この“家に帰ったら羊羹があったらいいな”を使う。
先輩たちはこうやって説明する。
「君はこういう経験は無いかい? 子供の頃に羊羹が食べたいなぁと思って家に帰ると、今日のおやつは羊羹よ。なんて出てくる」
それが、この部でいうところの「魔法」だと。
意味わからん。意味分からんが、ヅカ先輩がこれを説明している時に俺はうっとりとその姿に見とれていた。そして心地よい高過ぎない声に聞き入っていた。たとえ内容が“魔法”という、うさんくさそうなものであってもだ。
この部は部活内でこそ「魔法部」ということになっているが先生や学校への手前、表向きはオカルト研究会という事になっている。
オカルト研究会なら先生も学校も許してくれるのか、そして暖かく見守ってくれるのか、俺は謎に思ったがオカルト研究会を掲げながら、この魔法部はもう三十年以上続いているという結構な伝統的な部らしい。
最初にオカルト研究会だと思って入部を希望してきた者たちが、この最初の「魔法」の説明を受けて三分の一ぐらいの者が去っていく。
つまり三分の二も「魔法」なんて言葉を聞いても辞めないのだ。元々、オカルトに興味がある者は「魔法」にも興味があるのだろうか?
俺は最初から部活説明会で発表していたヅカ先輩目当てだったので、オカルトが魔法になろうと大して問題は無かった。
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