第12話 完

「次の乗り換えの美濃太田で、本来なら行きと同じように太多線に乗り換えて多治見まで行くんだけど、予定を変更してこのまま高山本線で帰りましょう」

 副部長がそう提案する。高山本線? また高山に逆戻りすんだろうか。

 どうやら『高山本線』とはいうものの、その上りは岐阜駅の方に行くらしい。

「ねぇ皆、お金どれぐらい持って来てる? 千五百円ぐらい余分にある?」

「それぐらいなら何とかありますよ」

「美濃太田で高山本線に乗り換えたら、鵜沼というところまで行って、そこから名鉄で帰りましょう」

 副部長の話によると、高山本線で岐阜経由で名古屋に向かうよりも鵜沼まで行って、そこから名鉄の新鵜沼駅まで三分ほど歩いて、中部国際空港行きに乗り換える方が早く帰れるらしいのだ。

 けれど名鉄だとJRの青春なんちゃら切符は使えないから別で切符を買わないといけないことになる。

 それでも全員賛成で、名鉄で帰ることにした。

 新鵜沼駅で乗り換えた中部国際空港行きの電車は座席指定制の特急列車だったが、常滑までもう乗り換えずに帰れる。

 俺たちは、その特急に乗ってやっと一息ついた感じになれた。

「なんか、おおじょうこいた旅やった。でもこっからは、あんきやな」

 おおじょうこいた、とは苦労したという意味だ。確かに電車に乗って雪を見に行っただけなのに変に慌しく疲れた。

「愛知県に帰ってきても雪、止まないね」


 一時間半弱ほどして地元に帰り着いたが、ここでも薄っすらと雪が積もっていた。

 名古屋では毎年、なんだかんだと雪が降っているが俺たちの地元、常滑はあまり雪が降らない。

「これってもしかして俺たちの魔法の影響でしょうか」

「そうかもしれないね」


「家に帰ったら、温かい緑茶と羊羹があったらいいな」

 ぽつりとヅカ先輩が言う。

「じゃあまた魔法起こさないとですね」

 俺はほんわかと微笑むヅカ先輩を見ながら、こっそりヅカ先輩の自宅にお茶と羊羹を届けようかと思った。

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青春なんちゃら切符の旅 ピューレラ @natusiiko2

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