こちら クラフトビール広報部!
ほたてさん じゅうななさい
プロローグ 「はじめまして、今日から隣に越してきました!」
・一話完結スタイルです。
・気になる種類のビールやお店のお話からどうぞ。
・ふんわり楽しくお気軽に。難しいことはほとんど出てきません。
今年の春から社会人になる 舞浜みつき は、ビール好きの教育係 常陸野まなか から、日本には大手メーカーが作る以外にもいろいろなビールがある事や、その場で作られたビールをすぐに飲めるお店が身近にある事を教えられる。
そんなみつきが、ふんわり楽しくお気軽に、先輩や同僚たちといろいろなお店でいろいろなビールを飲むうちに、いつのまにか知識がついたりつかなかったりする物語。
§ § §
コンコン……
「はじめまして、今日から隣に越してきました舞浜みつきと申します──」
今年の春から新入社員となる舞浜 みつきが、寮の隣室をノックしたのは、入社式を一週間後に控えた日曜日の夕方だった。
「はーい、鍵は開いてるから、どうぞー」
「失礼しまーす」
フレンドリーな入室許可が返ってきて、みつきは緊張感を解きながらドアを開いた。
明るめのブラウンの家具で統一された居心地のよさそうな室内の中に、寮生活に慣れた雰囲気の──社会人の先輩に見える──女性が2人ローテーブルを挟んで座っていた。
「はじめまして、みつきちゃん。私は夏の夜って書いてカヨ。カヨちゃんでいいよ?」
白くて柔らかそうなフラフワのルームウェアを着こなしたカヨは、長い栗色の髪をふわりとなびかせながら、もう1人の女性に顔を向け、説明を続ける。
「この子は常陸野 まなか。まなかちゃんって呼んであげてね。この部屋、まなかちゃんの部屋なの。よろしくね」
部屋の主を差し置いて、ドア越しの入室許可だけでなく2人分の自己紹介までしつつ、カヨは優しい笑顔を浮かべた。
カヨに自己紹介の機会を取られたまなかは、苦笑しながら改めて自己紹介を重ねる。
「……常陸野です。よろしくね、みつきちゃん」
「はい! まなかさんにカヨさん、ですね。これからどうぞよろしくお願いします!」
「そうだ、みつきちゃん。もし時間あればお茶でもどうかしら? この寮、シェアハウスタイプなの。他の会社の人もいたりとか、少し変わってるところもあるから、もし分からないことがあったらお話できるし! 」
名案とばかりに両手を軽く打ちながら誘ったカヨは、手にしたワイングラスを軽く上げて見せた。
「いいんですか? じゃあお言葉に甘えてぜひ……」
そう即答しながらみつきが視線をローテーブルに移すと、小振りなワインボトルが一本と、白葡萄のイラストが描かれた小さめのビール瓶のようなものが一本。自室の引越し荷物の中から飲み物やお菓子を持ってこようかなあと、みつきは一瞬考えを巡らした。
みつきがなにやら考えていると見るや、まなかは立ち上がり、長めの黒髪と着心地の良さそうなワンピースのルームウェアの裾を広げながら、冷蔵庫の中身を確認に向かっていた。
「……この前カヨちゃんが置いていったお茶とかカルピスサワーとかかな。甘いの大丈夫?」
みつきは目を輝かせながら答えた。
「はい! 甘いお酒、好きです!!」
こうして、みつきの引越し1日目のミッション、隣室の先輩への挨拶が終わるやいなや、寮でのプチ歓迎会が始まったのだった。
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