うっそりと、世界に立ち竦む。

とにかく美しい文章と、ざわざわと胸を騒がせる心地に読み進める手を先へ、先へ、と逸りすぎるのを宥めながら、美しい描写に飲み込まれます。
SFの世界は小説概要を見るだけで十分でしょう。冒頭の衝撃と、その衝撃から浮上させずに引き込むあまりに美しくざわつく描写。
うっそりしてしまう、という言葉がこれほど似合う文章と出会うなんて、と、いう心地。先に記したように、ざわつきは先を急がせ、にもかかわらずあまりにもうっそりとした文章がじっくり読ませることをやめさせない。先へ、いやここへ。とどまる心地と逸る心地の妙が、心を掴んで離さない。

どういえばいいのか、レビューなのにうまくまとまりません。
衝撃と、そのくせガツンとなぐられるというよりはひたすらたたずむしかないような心地の奇妙な空白に、とにかく楽園に足を踏み入れてみて欲しい、と思います。

あまりにうつくしい世界の光が、今も焼き付いてしまっている。

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